その後の反応
初めてのキスはおれからだった。
初めて抱きしめられたのはおれが泣いていた時だった。
初めて抱かれたのは、おれから迫った時だ。
じゃあ、もし、おれが、離れて行ったら？
―――その後の反応は？
キスにしてもセックスにしても、誘うのは元より、もっと、もっととねだるのはいつも自分。
言葉が欲しいわけではないが、必要とされていると実感したい。態度で示して欲しい。
そう思ったローは、ある実験をしてみることにした。
規則正しい生活をして、一人立ちする。
傍から見ると当たり前なのだが、普段のローの生活はあまりにも不規則なもので、
それを心配したペンギンが何かと世話を焼いていた。
そのついでに、ついついローから迫ってしまう、というのがお決まりのパターンだ。
接点があると思わず甘えてしまうので、まずはそれを減らしてみようと考えた。
****
やると決めたら意志は固い。朝は船員の起床時間に合わせて起きた。
いつもは不規則に睡眠を摂るが、それだとペンギンが起こしにきてしまうから。
きっちりと身支度をして朝礼に出ると、
その場に居た誰もが自分を二度見するのが気に食わないが仕方ない。
朝礼が終わると、船員達とそのままダイニングへと向かう。
普段ならば絶対にそんなことはしないのだが、きちんと朝食を摂る為だ。
ローの右隣に座ったベポと斜め前に座ったキャスは単純に喜び、
色々と話しかけてくるのでローは笑顔で応えた。
真向かいに座り、訝しげな目線を送ってくるペンギンとは目を合わせずに。
そのまま様子を伺ったが、昼食が終わっても夕食が終わっても
ペンギンはこちらを気にしてはいるものの雑務に追われているようで、
仕事以外でローに話しかけてくることはなかった。
―――あいつ、おれが自分のこと好きだと思って安心しきってんじゃねェの？
不満は時間と共に膨れ上がり、それと同時に苛々が募る。
慣れない量の食事を摂ったせいで胃は重いし、
そろそろ就寝の時間だという頃になると、気分は最悪だった。
「キャス、ちょっと」
「はい、船長」
「船長命令。ちょっと付き合え」
これ以上やっても埒が明かない。そう思ったローは
ダイニングで仲間達と休憩していたキャスケットを呼びつける。
勿論、ペンギンに聞こえるようにと声を大きめにするのを忘れない。
****
「…あっ、ん」
「船長…」
「や、そこ気持ちイイ…」
「ちょ、そんな声出さないでください、…っ」
ローの艶やかな声は、男にしては高めでよく通る。
まして今日のように風のない夜は余計に。
船長室の声はそのまま、隣の副船長室へと伝わった。
でもそれは――、逆も然り。
隣から聞こえる嬌声に慌てたペンギンは、
がたん、と大きな音を立て跳ねる様に立ち上がると
その勢いのまま船長室との連絡用扉を開けた。
「ロー！」
ベッドの上に居るのは、２人の男――
うつ伏せになった状態のローに跨り、マッサージをさせられているキャスケットと、
してやったり、とばかりにニヤニヤとこちらを見る船長。
緊急の用事かな、そう勘違いをしたキャスケットは、ペンギンと入れ違いに軽く会釈をして部屋を出る。
ローは、しまったという顔をして気まずそうに立ったままのペンギンのもとへ歩み寄ると、
すこし小首を傾げて見上げるように、じっと瞳を覗き込んだ。
「今日は朝から活動して疲れたから、キャスにマッサージしてもらってただけなのに」
「そ、うか、邪魔して悪い」
「なぁ、何でそんな慌ててんの？」
「―――！」
「…そんな形相で飛び込んでくるくらい、おれのこと大事？」
首に腕を回しながら責めるように囁くと、思ったとおり、腕の中に閉じ込められる。
抱き締められて聞こえる心音は、いつも冷静なこの男にしては少し早く、
気のせいか、体温も上昇している。
もう一度顔を見れば、見たことのないような真っ赤な顔。予想以上の反応に、思わず口角が上がる。
「オマエがおれをほっとくから、もういらないのかと思って。」
ダメ押しの一言は、言い終わる前に唇を塞がれたので最後までは言葉にならなかった。
後頭部を引き寄せられ、息継ぎもできないほどに与えられる口付け。
お互いの唾液が混ざり合ってとろけるような甘さになり、くらくらするような快感が全身を包む。
「わかった、もう少し気をつけるから」
「ちゃんと好きだから…」
「こういう脅しはやめてくれ、」
「あなたは自分の魅力を解っていない――」
「昼間からあなたに触れてたら、おれは仕事どころじゃなくなる」
ようやく解放されたかと思うと、自分を抱き締めたままの
真っ赤な顔のペンギンの口から紡がれる言葉。
滅多に聞くことのできない本心を聞けた喜びで、ローの心は満たされていく。
「…うん」
いつになく素直に返事をすると、今度は自分からペンギンの頬にキスをした。
end
改定履歴*
20090905 新規作成
配布サイト様URL→http://niwata.jougennotuki.com/
（ワンピ関係ない一般のサイト様なので一応URL表記のみにしておきます＞＜；すみません。）
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