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お目覚めの時間です

「お早うございます、お目覚めの時間です」

静かにカーテンの開く音とともに部屋中に差し込んでくる、明るい朝の光。
大きなベッドの上、見るからに質のよい寝具に包まれて眠るこの部屋の主人は
まだまだ睡眠を欲しているようで、気だるそうにひとつ唸るとシーツを頭の上までたくし上げた。

「坊ちゃん起きてください、ご朝食の準備も整っていますよ」
「んぅ…まだねむい、ねる…」
「全く…ですから、昨日申し上げたでしょう。あまり夜更かしすると起きれなくなりますよ、と」
「〜〜っ、おまえだって一緒に起きてたのに、何でそんなに元気なんだ」
「トラファルガー家の執事たるもの、早起きくらいできなくてどうします」

名門貴族トラファルガー家の当主は、若干12歳の少年であった。
執事であるペンギンに抱き起こされて、小さな欠伸をひとつ。
今日の予定を聞かされながら、真っ白で肌触りのよいシャツに腕を通し、
当主に相応しい上等な服へと着替えを進める。
仕上げに、くいと顎を上げるローの細い首にペンギンは丁寧にネクタイ代わりのリボンを結う。
シュルシュルという衣擦れの音がしたかと思えば、次の瞬間には綺麗な結び目が完成していた。

「ペンギン」
「はい」

恭しく傅いて華奢なふくらはぎに手を添え、ベッドに座ったままの自分に靴を履かせるその仕草に、
ローは自分の中の欲が首をもたげるのを抑えることができなかった。
執事の漆黒の燕尾服の肩口に手を当て、そのまま頬へと滑らせて顔を上げさせる。
そうすればペンギンはその意味が分かったかのように、くすりと笑って立ち上がった。

「今服をお着せしたばかりですのに」
「そんなもの終わってからまた着せればいいだろ」
「昨夜あんなにして差し上げたのに、まだ足りないのですか?」
「たりない、あんなのじゃ――ペンギン、はやくしろ」

主人はベッドに座ったまま、執事の裾をきゅっと引っ張って『命令』を下す。
決して逆らえないのを知っていながら、それでも拒否されることを恐れているのか、
ローの深い藍の瞳がゆらりと不安げに揺れ、次の瞬間俯くように反らされる。
だからローは見ることができなかったのだ。
命令を受けたペンギンの口が、ゆっくりと弧を描くのを。



「イエス、マイロード」



ペンギンはそう言うと、まるい後頭部に大きな手を添え触れるだけのキスをした。
ぱぁっと朱をさしたように赤く染まる頬を撫でながら、次は深いキスを。
あまい舌を絡ませて自分の方へ引き寄せゆるく噛めば、鼻から抜けるような吐息が漏れる。
ちゅうっと可愛らしい音を立てて唇を解放したかと思えば
次の瞬間には細い喉元に噛み付き、形のよい可愛らしい耳たぶまでを舐め上げた。

「ん…ふぁ、ぺん、きもちいい」
「知ってます、ココ、こんなに濡れていますから」

慣れた仕草でローの細い腰を抱き上げて服を脱がすと、既に立ち上がりかけていたものが飛び出した。
先端が鮮やかなピンク色に染まったソレが外の空気に触れてふるりと震えるのを可愛く思いながら、
現れた白く柔らかな内腿をひと撫でして舌を這わせ、付け根までを辿る。
ただそれだけで、まだ成長途中で小振りな性器の先端からはこぷりと新しい蜜が零れ落ちた。

「っぁ、あ、んっ」
「まだ触れてもいないのに…いやらしい体をお持ちですね、坊ちゃんは」
「お おまえがそこばっかり見るから…」
「見られるだけでは不満ですか?」
「!!ひぁ、やぁあっ!」

ぱくりとペンギンの口腔内に自身の大きくなった性器が納められて、
驚く程にあたたかな粘膜に誘われるまま、奥へ奥へと導かれる。
そうかと思えば裏筋をねっとりと舐め上げられていやらしい水音とともに先端を吸い上げられ、
ローの意識はあっというまに快楽で埋まってしまった。
ペンギンの尖った犬歯がいたずらに先端を抉る度にローの唇からは上ずった嬌声があがり、
寝起きの体には強すぎる快感を逃がそうと無意識のうちに細い腰が左右に触れる。
それを大きな手のひらが窘めるように包み込んで、
時折性感帯である脚の付け根をなぞるのだからたまらない。

「あっ、や、も もう出る、だめ、ぺん」
「…我慢なんてなさらなくていいんですよ、ご主人様」
「やぁっ!ひぁ、あ――っ」

尖らせた舌で先端をぐりぐりと刺激されて、ローの目の前が真っ白に光る。
咥えられたままびくん、びくんと断続的に跳ねる性器からは、昨夜からの行為の名残で
幾分薄くなった精液が吐き出されて、ペンギンはそれを一滴も零さないように口で受け止めた。
そうして、キスで口移すのだ。まるで雛鳥にえさを与える親鳥のように。

「っん――…、っぷは、にがい」
「あなたの精液でしょう?本当に、わがままなご主人様だ」

咎めるような言葉とは正反対の甘さを持った手がローの濃藍の髪をゆったりと撫でる。
ローのさくら色に染まった頬や、涙をいっぱいに湛えた髪と同じ色の瞳に口付けて、
それでは足りないと強請れば深い口付けを与えられて。
早鐘を打つローの心臓が落ち着くまで、時間を掛けてたっぷりと甘やかされた。

「…ぺんぎん、キスやさしくなった」
「大切なご主人様相手ですから」
「おれのこと、ちょっとは好きになってくれたのか?」
「――いいえ、私は職務を全うしただけです」
「うそだ、なぁぺんぎん、おれはおまえのことが」

ローの形のよい唇を人差し指で制して、しぃっと窘める仕草のなんと優美なことか。
ペンギンはいつだってそうだった。
『ご主人様』に言われるがまま射精を手伝い、意識が飛んでしまうくらいに濃密なキスを与えても、
ローの言いたいことはうまくはぐらかして決してそれ以上のことはしようとしない。
そうして、こうやって見惚れているうちにいつもの決まり文句を口にするのだ。



「私は…あくまで、執事ですから」



最高級の微笑を浮かべて吐息が触れる距離で囁かれる言葉は、甘くて苦い毒のようなもの。
この美しい悪魔に囚われてから早数年、想いが伝わるのはいつの日か――





end

改定履歴*
20110112 新規作成

書きたかったセリフ↓
『トラファルガー家の執事たるもの、○○くらいできなくてどうします』
『イエス、マイロード』
『私は、あくまで執事ですから』
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