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こんな風に寒い朝は

窓から注ぎ込む眩しいくらいの朝日で、目が覚めた。


時計の針は6時少し前を指している。身を起こして、寒さに身震いをひとつ。
普段は室内で着ることなどない暖かなコートを着て窓の外を見れば、
甲板には一面の雪が積もっていて、あの眩しい光はこのせいかと一人納得する。
船は、昨日から冬島の気候に入っていた。

ノースブルーで旗揚げをしたハートの海賊団は、他に比べて寒さには慣れている筈だが

それでもこの急な寒暖の差は、正直堪えた。
冷え込みは驚くほど厳しくて、室内でも吐く息が白い。
キャスケットは自分よりも寒がりだから、きっと布団から出たがらないだろう。
他のクルーも同様。雪と寒さを喜ぶのはベポくらいか。

――ローは、どうしているだろう。

誰よりも大切な船長のことが気になって、ペンギンは隣の船長室へと足を向ける。
外の扉からだと冷気が室内に入ってしまうから、なるべく使わないように心がけている内扉から。
ローがもし寝ていたら、起こさないように…とそろりと扉を開けると、
室内はしんとしていて、ただベッドの上の布団がゆっくりと上下していた。

――寝ているの、か

静かに近寄っても変わることのないローの様子からそう判断したペンギンは、
起こさないようにベッドの端に座り、少しだけ見えているローの髪をそっと撫でる。
サイドテーブルにはランプと小難しい医学書が無造作に置かれていて、
昨晩もいつもの様に遅くまで夜更かししていたことが容易に想像できた。

ペンギンはちいさなため息をつくと、久々にゆっくり見るローの部屋をぐるりと見渡す。
大きめのベッドの傍らには、ふかふかのソファがふたつ。
ひとつはローが集中して本を読んだり考えたりする時用の一人がけのもの。
そしてもうひとつは、ふたりで座れるものだ。
窓のある壁沿いに作りつけられた腰までの高さの本棚に、大きな薬品の棚と実験台。

ローの好きなものは昔から変わらなくて、薬品と本と、それから、触り心地がモフモフのもの。
見事にその要素だけで埋め尽くされた部屋はいつ来ても変わらなくて、
ペンギンにとっても落ち着く空間だった。
次の島にはいつ着くだろうか、流氷がなければいいのだが――…、
壁に貼られた地図を見ながらそんなことを考えていると、手に触れる暖かな感覚に気付いた。

「――おはよう、ロー」
「ん、何か…あったのか?」
「何も。起こしてしまってすまかった」
「おまえがここに居るの、…めずらしい、な」

いつから起きていたのか、ローは布団の隙間からすこしだけ顔を出してこちらを窺っている。
先程感じた暖かな感覚は、ローの手だった。その手が、くい、と自分の手を布団の中へと誘う。

「ぺんぎん、こっち…一緒に寝よ」

下心など微塵もない、ただ、いつのまにか冷えていた身体を温めようというだけの
ローのやわらかな笑顔に絆されたペンギンは、誘われるままベッドに潜り込む。
途端に、細くてあたたかな体がペンギンに抱きついた。

「まじ冷てえ…いつから座ってたんだよ、さっさと中に入ってくればよかったのに」
「いや、あなたを起こすのは嫌だったんだ」
「結局起きたっての。おまえほんとバカ」
「はは、そうだな。悪かった」
「…もう今日の夜ははじめっから一緒に寝る。さむいし」

ペンギンは自分に抱きつく腕にきゅっと力を込めながらそう呟くローを抱き締めて、
そうだな、とだけ呟くとその髪へとキスを落とす。
ベッドの中はふたりの体温でぽかぽかと温かく、そのしあわせな感覚に、
ほんのひとときだけ、と決めて二度目の眠りに堕ちていくのだった。







改定履歴*
20100106 新規作成

寒い日の朝の定番はニ度寝ですよね。うちのペンギンはローさんにとても甘いです。冬は寒いから、ふたりがくっついてればいいなっていう妄想です。
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