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夜の入り口

「熱いから、気をつけて」

夕食を摂らなかったローのために食事を持ってきた船長室。
ペンギンは脚を抱えてソファに座るローの前にカップを置くと、隣に座った。
淹れたてのコーヒーが入ったそれからは、いい匂いがする。

深く被った帽子の下、不機嫌そうな顔の理由は、大体解っていた。
昨夜、ローの誘いに乗れなかったことに怒っているのだろう。
勿論わざとではない。出来れば甘い時間を過ごしたかった。
しかし、一昨日からの海は、ともすれば進路を見失ってしまう程荒れていて、
航海士だけに任せておくには頼りなく、ゆっくり相手ができなかったのだ。

元から毎日三食規則正しく食事を摂ることはないローだったが、
今日の夕食に限っては自分への当てつけだろう。
そう確信していたペンギンは、静かに声を掛けた。
ローは、食事やコーヒーには見向きもせずに押し黙っていたが、
包み込まれるような雰囲気に少しは満足したのだろうか、
暫くすると隣に座った男の手に触れ、甘えるように指を絡める。

ローのものより一回り大きな手。端整な顔立ちに似合わずごつごつとしたそれからは、傷や痣が見て取れる。
幼い頃にはなかったそれらの傷。成長して、航海に出て、戦闘の回数をこなすにつれて増えていったのをローは知っている。

そのどれもが、自分の為の傷なのだ――
そう思うと、怒っていた筈なのに、この手が、そして持ち主のことが愛しくてたまらなくなる。

「ロー、どうした?」

仕事とプライベートをきっちり分けるこの男は、普段は船長と他人行儀な呼び方をする癖に、
二人きりになると自分を名前で呼ぶ。
…いや、呼び名だけではない。声色も、それから、目線だって少し甘いものに変わるのだ。
仕事に対してのあまりのストイックさはローを苛々させることもあるが、
終わればとことん甘やかしてくれる。そんな所も好きだった。

指を絡めたまま、じっと瞳を見る。髪と同じ、漆黒の綺麗な瞳。
その瞳が自分から逸らされることはなく、ローは引き寄せられるように口付けをする。
ちゅ、と軽い音をさせて離れると、後頭部を優しく引き寄せられ、そのまま唇を塞がれた。

ペンギンが、どうやったらその気になってくれるかなんて知っていた。
体をずらして繋いでいる手の反対側――、自由になる左手を首に回して体を密着させると、
予想通り、ペンギンの鼓動がトクンと音を立て早まるのが解る。
自分の腰に大きな手が回り、服の中にその手が進入するのに気付くと、

っと、もっととせがむようにしがみついた。

早くこの男が欲しかった。昼間中焦らされて、どうにかなりそうだったから。


繋いだ手を。
塞いだ唇の中にある甘い舌を。

絡めて、逃がさない。


「…っはぁ」

息継ぎのために解放された唇からは、二人を繋ぐように透明の糸が架かっていた。
先程まで二人を甘く包んでいた空気は、熱をもって膨れ上がり部屋中を満たしていく。

「…食事は…?」
「後でいい…」

ずっと欲しかったのは、食事なんかじゃない。
煩いことをこれ以上言わないうちにと、ローはペンギンの服を開け、首筋へ緩く咬み付く。
うっすらと残る歯型はまるで所有物の証。もっともっと。つけたい。こいつはおれの物だって印を。

そのまま、ペンギンの体に圧し掛かるように体重を預けようとした時、ふわ、と自身の体が空に浮き、
次に降ろされたのはベッドの上だった。耳元で囁かれる言葉に全身が震える。

『誘ったのはあなただから、覚悟して。』



****
ローの気持ちいいところを知り尽くしたペンギンのセックスは最高で、
いつもなら、そのまま何度もイかされてしまうのだが、今日は違った。
もうあと一息で達してしまう――するとそれが解るのか、寸前で刺激が弱められる。
深く、浅く、調子を変えて後孔を突かれ、ローはもう半狂乱になって喘いでいた。

「ペン、お願…、もう、イきたい…っ」
「だめ。まだ全然足りない。」

艶やかな表情でペンギンを見つめるローの瞳からは、ぽろぽろと涙が零れる。
必死にお願いしても聞き入れてもらえず、そのくせ、
ぎりぎりのところまでは快感を与えるなんて、相当なサディストだ。


「…あなたが誘っているのに、おれがわざとセックスしなかったと思ってるの?」
「ふぁ…あ…っ」
「そんな訳ないってわからない?」
「あ、―っん、…っ」
「ねえ、聴こえてる…?」
「あっ、あっ…、き、こえて る…っ、あ」
「おれだって我慢してたんだ、なのにあんな風に煽られたら、こうなるのはわかってただろう?」

甘く咎める言葉は快感の渦にかき消され、もうローの耳には届かない。夜はまだ、始まったばかり――







改定履歴*
20090827 新規作成

ローが誘いすぎたらペンギンが豹変しました。意地悪ペンいいと思います^^
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