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あまいにおい

目線の先、甲板に座り込んで読んでいた本の上に人形の影が落ちる。
大きな帽子を被った特徴的なその姿に、それが自分の敬愛する人物のものだと気付くのに
そう時間はかからなかった。

「船長」
「キャスー、おれもそれくう」
「あ、はい」

頭上からあまえたように語尾の上がる口調でそう声を掛けられて、
キャスケットは跳ねる鼓動を押さえながらごそごそとつなぎのポケットを探り、飴玉をひとつ差し出した。
あーん、と口を開けて甘味を待つその仕草に、雛鳥のようだな、と照れ笑いを零す。
キャスケットの手から直接飴玉をもらったローは、ご機嫌のよう…に、見えたのだが。

「キャス!これのどあめじゃん!おれこれやだあ!」
「えぇ、おれ今これしかもってないです」
「スースーする…やだぁ…」
「なっ泣かないでくださいよ船長!」

不意に訪れた穏やかな幸せをかみ締める間もなく、ローは途端に不機嫌になってしまった。
ああ、何で今日このタイミングでのど飴なんか持っていたんだろう。
気まぐれだとしても、せっかく船長が二人きりのときにおれに甘えてくれていたのに。
ローがこんな風に甘えるのはめずらしいことではないが、いつもは決まってローの傍に控えている副船長が邪魔をするのだ。

――そう、こんな風に。

「船長、どうしたんですか?」
「ぺん、これ、これのどあめ…やだ…」
「泣かないで。おれがたべてあげますから」
「んっ」

ローのぐずるような声を聞きつけてあらわれたペンギンに、ローはすぐさま泣きついてしまった。
それだけでなく、不機嫌の理由を聞き出したペンギンは最高に甘やかす手段でそれを取り除こうとする。
キャスケットは、15センチほど身長の高いペンギンを見上げるローの両頬に大きな手を添えて
そのまま飴玉を口移すふたりの様子を、スローモーションのように見ていた。

「…ほんとだ、のど飴ですね」
「だろ?まだ口の中スースーする…」
「な、な…船長もペンさんも堂々といちゃつかないでくださいよー!」
「キャスにもしてやろうか?あめちゃんちゅー」

思わず出てしまった叫びにも似た抗議の声に、ローがごく自然にそう返すものだから本当に心臓に悪い。
もっとも、ローのその提案は「だめです」というペンギンの冷たい一言で
キャスケットの僅かな期待ごと一蹴されたのだが。

ペンギンにまとわりつくようにして甘えるローと好きなようにさせて甘やかすペンギン。
この二人が恋人同士ということは船中周知の事実だが、自分だって…というか、
クルーは皆ローのことが好きなのだ。
船長の気まぐれでできたこの少しの間くらい夢を見させてくれてもいいのに、と
独占欲の強い副船長に心の中で抗議をする。

「みるきーがいい、ぺんぎんみるきーちょうだい」
「はいはい、まったく子供ですね船長は」
「ん…そんなことない」

船長だって、ペンさんだけでなく自分にも甘えてくれてもいいのに…と思ってみても、
甘ったるいにおいをさせて、ミルキーで膨れた頬で拗ねているローのことが、可愛くて仕方ない。
とりあえず今度からはミルキーをいつもつなぎに入れておこう、
キャスケットはそう心にきめてふたりがじゃれあっているその場を静かに後にするのだった。





end

改定履歴*
20101214 新規作成
ペンロがいちゃいちゃしてるとしあわせです…本当にふたりとももうずっとじゃれあってればいいのに。
独占欲の強いペンギンもだいすき。
あと、ローたん178せんちペンギン193せんちで妄想してます。
ワンピはみんな身長高いからそれくらいでいいかなーって。
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