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KissHug

「ペンギンなんか大嫌いだ!」

そんなセリフが思わず口をついて出てしまったのは、仕方ないと思う。
船がトラブル続きで、忙しく働くペンギンに一週間近くほっとかれたのは、寂しかったけど我慢した。
むしろ、おれが気付かない部分までしっかり気を配ってサポートしてくれるペンギンには感謝してる。

でもやっとその忙しさから解放されて、落ち着いて朝まで一緒に寝る約束をしていたのに。
ベッドに入って抱き合って、さぁ眠ろうという段階であいつが自分の部屋に戻るとか言うから。
おれにとっての一番のしあわせ時間を省略するとか言うから、
…寂しさでおかしくなってしまったんだ。

昔だったらどんなに忙しくても、約束した以上おれと朝まで一緒に寝てくれたのに。
もうおれのこと、前みたいには好きじゃないんだろうか。
おれがペンのこと好きだから、ほっといてもちょっと構えば
いつでもヤれるって思われてるんだろうか。
そう思うと悔しくて寂しくて、情けないことに涙すら滲んでくる。


あれから数日が経つというのに、ペンギンとは2人でゆっくり話す時間もなく、
けんかは長引いたまま。
そんな空気に耐えられなくなったおれは、ペンギンの部屋で
風呂から帰ってくるのを待つことにした。

これ以上気まずいのはいやだ。前と違っておれのこと嫌いになったのなら、
そう言ってくれればいい。
そうしたらおれだって忙しいばっかりのペンギンより、
もっとおれを構ってくれるやつと適当に遊ぶから。

「ロー?まだ寝てなかったのか」
「…うん」
「明日も早いんだぞ」
「ペンギンだってまだ起きてる」
「おれはもうちょっとやることがあって…」

シャワーを浴びて部屋に戻ってきたペンギンは、やっぱりどこかそっけない。
自分のベッドに座っているおれが不機嫌なのも気付かないふりをして、
また机の上の海図に視線を移した。

そんな何気ない動作に、おれの不安といらいらは頂点に達したらしい。
気付いた時には、ベッドにあった枕をペンギンの後頭部にむかって投げつけていた。

「!…ロー、何するんだ」
「おれのこと飽きたんならそう言えよ!
こーやって無視されるより、そっちのが全然楽だ!」
「は…?そんなわけないだろ」
「でも、こないだセックスしたあとすぐに自分の部屋戻ったじゃんか。
今だっておれがいるのに無視するし」
「それは、やらなきゃいけない仕事がまだ残って」
「言い訳とか聞きたくない!!」
「ロー」
「…なぁ、ペンギンはヤれたらおれじゃなくてもいいのか?
それだったらおれだって、誰かほかのやつと適当にやるからいい」

おれの大好きなペンギンの漆黒の瞳が、驚いたように丸くなる。
しまった、言い過ぎた、かも。我ながら可愛げのカケラもない。
でも、…どうしても口がとまらなかった、ペンギンに否定してほしかったから。

意地を張っても強がっても、おれの体は正直だ。
ペンギンのちいさなため息にすら反応して、心臓が痛くなる。

――本当に、飽きたって言われたらどうしよう。

そんなことない、ただ本当に忙しいだけって信じていても、やっぱり怖い。
めんどくさいおれに構うのも限界になったって言われたら?

言い過ぎて謝りたい気持ちと、放っておかれて寂しい気持ち。
それから、目の前にいるペンギンに本当は甘えたいだとか、
いろんな気持ちがぐるぐると渦巻いて何も言えなくなる。


俯いたままのおれに近づいてくるペンギンの足音と、
ゆっくり差し伸べられる大きな手。
髪に触れるか触れてないかわからないくらいの距離で一度止まったそれが、
そのままおれの頬に触れる。

その優しい感覚に導かれるようにして視線を上げると、
そこにあったのはいつもどおりの優しいペンギンの顔だった。

「ごめん、そんな風に思わせて悪かった」
「……あの」
「ローのことはちゃんとすきだよ。不安にさせてごめんな」
「――っ」
「ほんとに、ごめん」

目のふちをゆっくりなぞった大好きな大きな手は、そのまま額へと滑るように移動した。
前髪を二、三度撫でられたかと思うと、次にそこに触れるのはペンギンの唇。







「ロー、仲直りしよう?」

大好きなペンギンの唇がそっと額にふれて離れるときの、
ちゅ、という音がやわらかく耳に響いて、思わず涙が零れそうになる。
けんかの度に決まって繰り返されるこのキスが、おれはだいすきなんだ。

「な?」
「……ぅー…」
「仲直り、いや?」

そう言いながらおれを抱きしめてくる腕に逆らえない。

…ずるい。ペンギンはいつもずるい。
おれはいつだって、結局、おまえの思い通りだ。
今だって、そんな昔のままの笑顔で仲直りしようなんて言われたら、
『嫌だ』なんて言えるわけないだろ?
なだめるように背中を撫でられて、それがひどく気持ちよくて、甘えるように目を瞑る。

「…ペンギンの ばか」
「うん」
「おれのこと、ほっときすぎ」
「ごめん。嫌いになった?」

もうすっかり毒気を抜かれたおれの精一杯の強がりをものともせず、
くすくす笑いながらそう返すペンギンに、思わずきゅっとしがみついてしまった。
ペンギンは、まるでおれの気持ちを全部見透かしてるみたいだ。
きっとおれがペンギンのキスが好きなのも、
抱きしめられると安心するのも、全部わかってやってる。

なんだかうまく手のひらの上で転がされている気がして悔しいけど、
でも、そんなおまえのことが、おれはずっと――

「好きだ、ばか!ばかぺん!」






改定履歴*
20100907 新規作成
けんか中のペンギンの、でこちゅーとハグは仲直りの合図です。

『私はなぜこんなにもでこちゅーがすきなのか。ペンロでやってたら萌えしねる。
ケンカしたあとはとりあえず様子見ででこちゅーすればいいのにって
常々思っている』っていう呟きを見た
霧ちゃんが描いてくれたペンロに萌えた結果こんな文ができあがりました。

ペンギンイケメンすぎて見るたびに幸せです。
涙目ローたんたべたいです。きりおほんとにありがとう!!


ちなみにタイトルはあいこのうたです、
歌詞とは全然合ってないけど、タイトルだけ…^^*
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