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ずっとこのまま -3-

それは、永遠にも思える一瞬。

頬に触れた唇の感覚にローの涙が止まる。
目と目が合い、名を呼ぼうと口を開きかけたその時、
扉をノックする音と共に自分を呼ぶ声がした。

「船長、打ち合わせ中すみません。見張りから報告が」
「…あぁ」

掠れた声で返事をして扉へ向かって一歩踏み出そうとするローの肩を
ぽんと叩くペンギンの顔は、いつもの柔らかい笑顔に戻っていた。

「おれが行ってくる。遅くなるかもしれないから、船長は先に休んでいて」
「あ、おれも」
「いいから。…あなたのそんな顔を誰にも見せたくない」

そう言って少しだけ頭を撫でた後、扉を開け甲板へと向かう後ろ姿は
ローを船長と呼ぶいつもの仕事中のペンギンに戻っているように見えた。

だが、心は正直なもので、いくらペンギンが仕事に集中しようと思っても、
見張り台に上り自分の目で報告の内容を再確認している時も、
海図を見ながら他の者と対応と考え、指示を出す時でさえも。
その全ての瞬間で、ペンギンの頭を占めていたのはローのことだった。

ローの為だと思って突き放した結果が、あの表情と涙だったなんて。
あんな風に泣かせてしまうくらいなら、必死で抑えてきたこの想いを、もう、我慢したくない。
ローを自分の手で幸せにしたい気持ちは誰にも負けない。
この愛情は一生褪せることはないという自信もある。

――仕事が終わったら、もう一度船長室へ行ってみよう。
そのときにもし、ローがまだ、自分を待っていたら。



****
一方、一人残されたローは、唇が触れた頬に手を当てて先程の出来事を思い返していた。

抱き締められる前、ペンギンは確かに自分を避けていた。
日課の報告もどこかよそよそしくて、最低限の報告が済んだら気まずそうにしていたのが悲しくて、
こんなことになるなら、キスなんてしなければ良かったと自分を責めていると、涙が出たのに。

でも、抱き締めてくれた。どうして?
……もしかしたら、ペンも、少しは、おれのこと…
いや、もしかしたらただの気紛れかも知れない。
ペンはいつでもおれに優しいから、さっきだっておれの涙をみて、同情しただけ、…とか。

いい考えと悪い考えが交互にローの頭に浮かんでは消え、
ソファに埋もれたまま、2時間くらい経った頃だろうか。
聞き慣れた足音にうとうとしていた目が醒める。
それは、静かに隣の副船長室を素通りし、船長室の前で止まる。
その気配に思わず声を掛けるのと、扉が開くのは同時だった。

「ペン…?」
「ロー、まだ起きてたのか…?」

―――嘘だろう。戻ってきてくれた。
予想だにしていなかった行動に、ローは思わず駆け寄ってそのまま抱きついた。
自分を抱き寄せる手の暖かさがこの上ないくらいに嬉しくて、
昨日は受け入れてもらえなかった想いが、今度こそ伝わるような気がして。

ローは、肩に顔を埋めたまま、抑えきれない想いを言葉にした。

「好き、好きだ。お前のことが、好き」
「…っ」
「なぁ、おれのこと、ちょっとは、好き…?」

心臓が立てる鼓動がやたらと耳に響く。こんな緊張感は初めてだった。

ほんの少しの間の後、不意に頬にペンギンの手が触れ、くいと上を向かされる。
真剣な瞳が自分を捉え、それがゆっくりと近づいてきて――
唇に吐息が触れ、『キスされる』そう思った瞬間、ぐいと肩を掴んで体が離された。
ローの肩を掴む大きな手はすこし震えていて、それが解った途端に、希望が確信に変わる。

「ほんとに…本当に、後悔しないか?」
「好きだって言ってる」
「…二度と、あなたを離せなくなっても?」
「離したら許さない」

――ああ、もう、我慢できない。
ペンギンは、今度こそローをしっかりと抱き締めると唇へとキスをした。



****
一枚ずつ服を脱がせるたびに少しずつ上気していくローの体はひたすらに艶やかで、
まるで月夜の下満開に咲く花のようだ、とペンギンは思った。

船長室の大きめのベッドの上、直に触れる体温に酔いながら、
今までの分を取り戻すかのように、二人は夢中でお互いの唇を求め合う。
キスの合間に時折漏れる甘い声を聴くと、
今すぐにでも全てを自分のものにしてしまいたい欲望に駆られるが、
自分の下で体を固くしているローを安心させるように、ゆっくりと愛撫を始めた。

頬から首筋、そして鎖骨を経て胸、腹部へ。
大きな掌と唇から与えられる刺激はローの緊張を解し、体温を高めていく。
脚の間に体を滑り込ませ、臍と腰骨へキスをして、
そのまま下腹部へと唇を滑らすと、慌てたローが声を上げた。

「やっ、ペン、待って、そんなとこ」
「…恥ずかしいなら、目を瞑ってて」

ペンギンもそれなりに経験は積んでいたが、男を抱いたことは、今まで一度もない。
勿論、それを口に含むのも初めてだ。
しかし、戸惑いは無かった。ローに気持ち良くなって欲しい、その一心だったから。

口に含んだものを舌で愛撫しながら、唾液で濡らした長い指を入り口から中へと侵入させ、
内側をゆっくりと解して気持ち良いところを探るように動かす。
咄嗟に閉じようとするローの脚を手で抑えると、すっかり大きくなったものを丁寧に舐め上げた。

「あっ ん、―――っ!!」

あまりの刺激に、ローはあっけなく達してしまった。
ペンギンは、びくびくと痙攣するローの腰を抑えたままもう一度だけそこにキスをすると、
力の抜けたローの体が上へとずれないようにと背中に手を回した。

「入れるよ、いい…?」
「ふぁ…?っあ!」

できるだけ負担にならないように、ローの呼吸に合わせて腰を前に動かす。
それでもやはり初めての痛みはあるようで、
ローの表情は歪み、ぎゅっと瞑られた瞼から溢れた涙が頬を伝う。
必死に耐えようとしがみつく腕の先――ペンギンの鍛えられた背中には
ローの爪が喰い込み鮮血が滲むが、それはペンギンにとっては嬉しい痛みだった。

「ロー、辛い…?」
「だ い、じょうぶ、…ん、あ」

長い時間を掛けて全てを収めきると、ローの額に滲む汗を拭い、ゆっくりと律動を開始する。
間近で見るローの表情は蕩けきっており、それが支配欲を満足させた。
愛しむように全身でローを愛し、絶頂を迎えそうになる度にそれを我慢する。
そんなことを何度か繰り返すうちに、ふと、ローの頬に残る涙に気付いたのでそれを舐めとりキスをした。

何度目かの射精で体から力が抜け、ぐったりとしていたローだったが、
その優しい感覚にぴくりと反応すると、何かを伝えようと喘ぎながら声を出す。

「ぁ、っん、ペン、…っ、」
「うん?」
「――すき…」

深い藍の瞳に快感によって滲んだ涙をいっぱいに溜めて自分を見上げ、
聴こえるか聴こえないかの声で、自分を好きだという愛しい人。
思わず、ぎゅっと抱き締めると耳の傍で一度だけ囁いた。

「愛してる、ロー」

初めて聴けた、ペンギンからの言葉がローの胸を満たす。

どれ程望んだか。
息が止まったっていい。
心臓が止まったっていい。
ずっとずっと、このまま、大好きな腕の中に包まれて居られるなら。


ローは、ペンギンが自分の内側に吐き出す精液の感覚を全身で感じながらそんなことを思って、
遠のいていく意識を繋ぎとめようともせず愛しい腕に全てを預けて目を閉じた。







改定履歴*
20091005 新規作成
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