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ずっとこのまま -1-

月が綺麗な夜11時。
ローの船長室では、副船長のペンギンと二人、船の運営についての打ち合わせが行われていた。
これはハートの海賊団が立ち上がって以来欠かされることのない日課で、
打ち合わせと言っても実質船長の役割を担っているペンギンが
ローへ諸々の連絡事項と最終確認を行うというものだった。

シャワーも浴びて、あとは寝るだけの状態で行われる日課。
ペンギンの、まだ少し濡れている髪と、ほんのりと上気したような頬。
いつもの制服とは違うラフな格好から覗く肌には、ローお気に入りのタトゥーが施されていて、
それは見ていて飽きることがない。

――ペンは本当に綺麗だよな、そう思っている所で突然意見を求められてはっとする。

「……だ。船長、これでいいか?」
「あ、――え?」
「…さっきから3回目だぞ。しっかりしてくれ、船長」
「悪ィ」

ペンギンとは、幼い頃からずっと一緒に育ってきた。兄のように弟のように、支え合いながら。
ローの勝気な性格が原因となりケンカもよくしたが、仲直りの速さは周囲も驚く程で、
もしかしたら本当の兄弟よりも仲はよかったかもしれない。
尤もそれは、二人の年齢が離れていることに加えてペンギンの努力の賜物だったのだが。

いくつもの想い出はきらきらと輝く童話のようで、全て宝物としてローの胸の中にしまってある。
ずっとそうやって一緒にいたから、ローはある日気付いた自分の気持ちを認めるのに時間が掛かった。
何度も何度も気のせいだと、…勘違いなのだと思い込もうとしたが、そうすればそうする程募る気持ち。

――兄弟愛とは違う。一人の男としてペンギンのことが好きなのだ。

でも、本人には口が裂けても言えない。言わないと決めていた。
こんな気持ちで一緒に居ると知られたら、軽蔑されてしまうかも。
いや、それどころか、もう船を降りてしまうかもしれない。
一緒に航海を続けてはいるが、それは強制しているわけではないし、
いつか海賊王になりたいと言った自分にペンギンは付き合ってくれているだけだと思っていたから。

しかし、好きという気持ちを認めてからというもの、その感情は日を増すごとに膨らんでいくばかりで、
船長室で就寝前に二人きりで打ち合わせという日課が、そろそろ辛くなってきた。
低めで綺麗なペンギンの声が耳に響き、理性を保っていられなくなりそうな感覚を覚える。
でも、ずっと一緒に居るためにはこんな気持ちを知られるわけにはいかない。
ローは必死に、そ知らぬ振りをしてやり過ごそうとしていた。
そんな訳で、自然と打ち合わせには身が入らなくなる。


「ロー、最近どうしたんだ。悩み事でもあるのか?」

ペンギンは、小さな溜め息をつくと仕方ないなという風に少し微笑んで優しく声を掛ける。
仕事の時の真剣な眼差しとは違う、優しい目線。
それはローだけが知っている特別なもので、目が合った瞬間に顔が赤くなるのが解った。
まずい、変に思われる、そう思ったローは慌てて腕で顔を隠しふいと横を向くと、
消え入るような声でなんとか返事をした。

「ねぇよそんなん…」
「?顔赤いぞ、熱あるんじゃ…」

ペンギンはそう言いながら、熱を測ろうと心配そうにローの額に手を伸ばす。
こんなのは別にめずらしくともなんともない、よく見かける光景だった。
ただいつもと違うのは、ローの気持ちだけ。
想いがばれてしまわないようにとそれにばかり集中していて、
なんの心の準備もなく触れられたものだから、驚いてその手を振り払ってしまった。

「…ごめん」
「違う、悪い、 びっくりして…あの」
「気にするな、疲れてるんだよ。今日はもう休め」

そんなローのいつもと違う様子を、体調が悪いからだと判断したのだろうか、
ペンギンはローの髪をすこし撫でるとソファから立ち上がり部屋を出ようとする。

「待って、ペン…っ」

――いやだ、一緒にいたい。たとえ仕事でも、少しの時間でも。
慌てたローがその名を呼び、腕を掴もうとすると振り向いたペンギンに抱きつく形になった。
気持ちを自覚してから初めて感じる暖かな体温に、鼓動が、音を立てて早まる。

「ロー…?」

すこし驚いたような、でも心配そうな声。その声に応えるようにゆっくりと顔を上げると、
そこには幼い頃から変わらない、ローが大好きな優しさのまま自分を見つめる瞳があった。


――もう、我慢も限界。

自分より少し背の高い、ペンギンの首に腕を回しぐいと引き寄せると、
抑え切れない気持ちを伝えるように ローはそのままキスをした。







改定履歴*
20090928 新規作成
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