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苺、ひとつぶ -3-

ふたりが私室に戻ってみれば、そこに用意されていたのは大きなホールケーキだった。
真っ白の生クリームに瑞々しいいちごの赤が映え、添えられたチョコプレートには
『Happy White day』の文字。シエルが思わず隣にいた恋人を見上げると、
セバスチャンは恭しくその手をとって甲にキスを落とし、「バレンタインデーのお返しです」と笑ってみせた。

「お気に召していただけましたか?」
「…うん」
「よかったです。今切り分けますからね」

大きなナイフを操って器用にケーキを切り分けてゆくセバスチャンの手を、シエルの視線が追う。
セバスチャンは先程の言葉に「ソファで待っていてください」という意味を含ませていたのに、
シエルはその傍から離れることはなかった。勘の鋭いシエルには、きっと意味は伝わっている筈だ。
それでもじっと傍で待つ様子が、たまらなく可愛い。

いつもより大きめに切り分けたケーキとチョコプレート、それから、苺を皿に載せて
紅茶をカップに注げば、シエルの深い蒼の瞳は宝石のようにきらきらと輝いた。



「さぁ坊ちゃん」

ところが、それから数十秒後。
ソファに座ってにこりと微笑む執事の傍で、シエルは顔を真っ赤にさせて固まっていた。
おいでおいでと手招きをされて、それが意味しているところは痛いくらいに分かるけれど
どうにも動けない。…自分から、執事の膝に座るなど、恥ずかしくて仕方ないのだ。

「ぅ…、やっぱり」
「お約束でしょう?折角淹れ直した紅茶が、また冷めてしまいますよ」
「分かってるけど、でも」
「仕方ないですねぇ」

セバスチャンはそんなシエルの心の内が見えるかのようにひとつ苦笑いを零すと、
その手をとって痛くない程度にぐっとひいた。
バランスを崩して自分のほうに倒れこんでくるシエルを抱きとめて、そのまま膝の上に座らせ、
向かい合わせに抱きつくその姿勢に戸惑う恋人の腰と後頭部に手を回して、
否定の言葉が出てくる前に、深く口付ける。

「ん…っ、ん」
「…」
「んぅ、ぷは、セ、セバスチャ…っ!待…っ」
「…可愛いですね、貴方は」

目の前の執事が手袋の端を咥えてゆっくりと脱ぎ捨てるのが、涙で滲んだ視界に映る。
セバスチャンがこういうときに手袋を脱ぐのは、セックスの合図だった。
それはわかっていたけれど、シエルは足りなくなった酸素を補うように荒く息をつくので精一杯。
体からはくたりと力が抜けて、自動的に目の前のからだに縋ってしまう。






改定履歴*
201103015 新規作成
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