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蒼に溶ける恋 -4-

広々とした豪華なスイートルームの中で、執事が主人のアフタヌーンティーの為に選んだ場所は、
大きなソファの置かれたゆったりとしたスペースではなく、プライベートデッキへと続くサロンだった。
暖かな部屋の大きなガラス窓の向こうには太陽の光を受けてきらきらと輝く海を一望できる。
いたく海をお気に召したらしい主人への、セバスチャンなりの心遣いだ。

「坊ちゃんは、そこがお気に入りですね」

窓のすぐ傍へ置かれた一人掛け用のソファに座り、窓の外に広がる海を眺めながら紅茶を待つ
シエルの表情は、いつもよりどことなく楽しそうなもので、その年相応な可愛らしさに
セバスチャンもほんのりとこころが温まるような気がした。

「ここなら甲板と違ってお風邪を召される心配もありませんし、
 いつまでも眺めていてくださって構いませんよ」
「あまり海を見る機会は無いから…。我侭言って、悪かった」
「…おや、貴方がそんなに素直なのはめずらしいですね?」
「悪かったな」
「いいえ、うれしいのです。ご機嫌なのでしょう?
 主人に喜んでいただけるのが、私の幸せですから」

にこりと笑って歯の浮くような台詞を言えば、シエルは驚いたように目をまるくして
慌ててテーブルの上に飾られている柔らかい色使いの花たちへと目線を移す。
その解りやすさにくすくす笑いながらワゴンで運んできたティーカップやスイーツをセットしてゆくと、
今度はシエルは目をきらきらさせてそれをじっと眺めてくるのだ。
ほんとうに、わかりやすいご主人様だ。

「今日はまた、伝統的なアフタヌーンティだな」
「はい…、流石に私がキッチンに入ることは許されませんから。船でご用意したものになります」
「そういえば、お前以外が作ったスイーツなど久しぶりだ」
「お口に合うとよろしいのですが。さぁ、どうぞ」
「ん…まぁまぁだな」

こくりと紅茶を飲みながら、アプリコットのジャムを載せたスコーンを口に運ぶ。
その花が綻ぶようなシエルの笑顔を嬉しく思いながらも、
セバスチャンはこのスコーンを作ったパティシェに、少しだけ、嫉妬した。

「それは、ようございました」

隠そうとしても隠し切れないその心の乱れが声色に表れたのだろう、
口の端にジャムをつけたまま不思議そうに自分を見上げる主人の大きな瞳に誘われるように、
その細い顎に手を添え、そのままジャムをぺろりと舐めとれば、途端にシエルの頬は真っ赤に染まる。

「んっ、…セバスチャン、何…」
「…味見です。あまいですね」
「んぅ、ん、…ぁっ、やめ、足、擽ったい」

どんどん深くなってゆく口付けに、足りなくなる酸素を必死で取り入れながら抗議するのは、
ほっそりとした脚にいつのまにか伸びていた、セバスチャンの手の悪戯。
ハーフパンツとブーツの間の、いつもは素肌が見えている部分――
今日は海風が寒いからと履かされた長い靴下に覆われている部分をそっと撫でられると、
背筋がぞくんとなる。セバスチャンは、可愛い恋人が目を潤ませて感じている姿に満足すると、
長い長いキスからようやくシエルを解放した。






改定履歴*
20110328 新規作成
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