top * 1st * karneval * 刀剣 * utapri * BlackButler * OP * memo * Records

独り占めさせて? -1-

「―ーて。ね、起きて。花礫くん」

 自分の名を呼ぶ愛しい声に誘われて、ゆるゆると意識が浮上してくる。
 まだ眠い、とばかりに少しだけぐずってみれば、お望み通りにとおはようのキスが与えられた。そのしあわせな感覚に甘んじて瞼をあける。
 そこに居たのは予想通り、6つ年上の恋人だった。

「ん、何……」
「おはよ、『花礫くん』」
「はよ、って、まだ部屋、暗……?」
「うん、ごめんね、起こしちゃった」

 『花礫くん』という自分の呼び方も甘やかすような声も、優しく自分の頬を撫でるその仕草も、全部全部與儀なのに、どことなく違和感を感じとった頭が警鐘を鳴らす。その原因が、與儀の髪と、それから瞳の色だと気付くのにそう時間は掛からなかった。

「與儀!」

 花礫に寄り添うように一緒のベッドに居た恋人の髪の毛はいつもの暖かさを感じる金色ではなく、どこか冷たさすら感じるような銀色をしていた。

「あ――…さすがに呼び方だけじゃバレるか」

 銀髪の與儀は悪びれもせずそう言うと、今度は『おはよう花礫』と呼び捨てで挨拶をした。
 予想だにしていなかったタイミングで現れた銀髪の與儀に慌てた花礫は、慌ててベッドに身を起こす。自分と彼とを包んでいた一枚きりのシーツがはらりと肌を滑り落ち、そこで自分の格好があまりに情事後そのままであることに気付いた。
 何も服を身につけていないだけなら、まぁ無理はあるかもしれないがなんとか言い訳もできただろう。けれど今花礫の体にはたくさんの紅い唇の痕があり、下半身に至っては放ったままだった精液が乾いて白くなったものがべっとりとこびりついている。

「〜〜っ! なんっ、何でお前が」
「あれ、隠しちゃうんだ」
「これはっ、その……ひっ」

 それを隠そうとシーツを引くと、代わりに顕になる與儀のからだ。程よく鍛えられたその肌には、自分がつけた歯型やら爪の痕やらが残っている。見慣れたものとは言えとても直視はできなくて、花礫は思い切り視線を逸らした。そういえば自分が着てた服はどこにいったんだと薄目で探せば、與儀の体の向こうに見慣れたパーカーの青色を見つける。一瞬の逡巡の後、思い切ったようにぐっと手を伸ばした。指先が服に触れて、あぁよかったこれでとりあえず隠せる――そう思った次の瞬間、目の前を力強い腕が横切り、そのまま抱きとめられる。

「ッな、與儀、」
「あは、なに百面相してんの?」
「離、せって!」
「離さない。見られるのが恥ずかしいならこーやってくっついてれば大丈夫だよ。それに今更っていうか……ずっと見えてたから今更隠さなくても」
「は!? 見えてたって、え、……何が」
「え? 何がって、」

 銀色の與儀の口から語られたのは、今日與儀と花礫とが一緒に風呂に入ってから今までに至る情事の詳細だった。どんな言葉を囁いて、どの順番に肌に触れて、與儀の口淫で一度花礫がイった後、まず正常位で挿入して……銀色の與儀は柔らかな笑顔をたたえたまま、何でもないことのように言葉を紡いでゆく。

「それから――…」
「ま、待った! あの、もういい、わかった」

 アダルトビデオや官能小説よりもずっと恥ずかしいその口上をとても聞いていられなくて、花礫は両手で與儀の口を塞いだ。手のひらの中でもごもごと抗議の声が上がる。
 信じられないけれど、語られたのは、いつもの與儀ならばとても口にできないであろう言葉ばかりだった。それでいて、二人だけしか知らない情事をこんなに事細かに覚えているということは、つまり自分の目の前にいるのは、やはり間違いなく銀色の與儀で、彼には全て見られていたのだ。

「わかったから、あの、ちょっと離せよ」

 一気に熱くなった体温や鼓動が與儀に伝わっているのではないかと心配になった花礫が距離をとろうと試みるが、逃がさない、というように與儀の腕がそれを拒んだ。ぐっと腰を引き寄せられて密着度が増す。

「離さないっていったでショ? 大人しくしてて、花礫」

 花礫の手をひとまとめにしてそっと退けさせにこりと笑う目の前の男の笑顔に、くらりと目眩を覚える。

「〜〜っ、わかったよ……つーかなんでまた入れ替わったんだ? パッチ、ついてるよな」
「あー…俺が全力出しすぎて意識飛ばしてたから。今日長かったよね? 何回イってた? 俺。途中からもう数えてないや」
「は、」
「って聞いても花礫だって散々善がってたしわかんないか。それでね、ああ、花礫とのセックスって、そんなに……自分の体力の事まで頭まわんなくなっちゃうくらいに気持ちいいのかなって、気になって、だから出てきたんだよ。花礫の寝顔可愛かった、5分で起こしちゃってごめんね?」

 だって待ちきれなかったんだ、と。またあの笑顔でにこりと笑う。その言葉の意味を図りかねていると、與儀は腕の中に閉じ込めていた花礫の体をひょいと抱きかかえて自分の膝を跨らせた。

「『俺』があまりにもお前のこと好きだから、見てるだけじゃ足りなくなっちゃった」

 何も纏わないままの花礫の背中を、與儀の大きな熱い手がつうっとなぞってゆく。腰を経て、そのまま白く小振りな臀部へと辿りつたその指が、奥まった蕾に触れる。ようやく状況を把握した花礫が首を横に振るのと、與儀の指が中に入ってくるのは同時だった。

「ねぇ花礫、俺とも遊ぼ」






改定履歴*
20130703 新規作成
- 1/4 -
[前] | []



←main
←INDEX

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -