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上手にできましたか? -3-

「ひゃっ、ぁう」
「ねぇトキヤ、お前がいっぱい舐めてくれたから、ほら、俺のがちがち。わかる?」
「あ、おとや、擦っちゃだめですっ」
「え? 気持ちよくない?」
「違……きもちよすぎて、も、すぐイっちゃいそうなんです……」
「もう? まだ全然触ってないのに…」
「う…私、おかしいかもしれません、あなたのを舐めてるだけで、からだあつくて」
「あはは、うん、そっか。かわいい、トキヤ……。一緒にイこうね。トキヤが可愛すぎて俺ももう限界」

――だからはやくトキヤの中、入らせて?

音也がトキヤを抱き寄せ耳の傍で囁いた言葉は、今日いちばんの甘い響きをしていた。トキヤはこの声が苦手だった。ぞくん、と背筋がふるえて、目の前の恋人のこと以外は何も考えられなくなる。コンドームをつけてくださいだとか、明日仕事だから一回だけにしてくださいねとか、恋人に伝えるべき細々とした注意事項は、トキヤの意識の奥深くに沈んでしまっていた。

背中に、クッションの柔らかな感覚を感じる。トキヤが押し倒されたのだと理解するより早く、視界いっぱいに音也の髪の赤が広がった。同時に、ぐっと自分の中に雄が挿入ってくる感覚。十分に解されたとはいえ、やはり指と陰茎とでは熱さも質量も段違いだった。

「――っあ、や……っ、おとやぁっ」
「ん、トキヤ、トキヤのなかあっつい…」
「あっ、あ、…ひん、あぅ…っ」

熱いのはあなたです、そう言いたくても、口から出てくるのは情けない喘ぎだけ。『俺ももう限界』音也が先程そう言っていたのは、誇張でもなんでもなかったのだろう。いつもはゆっくり始まるはずの律動は、最初からがつがつと激しいものだった。音也の荒い吐息が肩に当たり、ぞくぞくする。とても目を開けていられずに瞼を閉じると、今度は赤の髪から香る洗いたてのシャンプーのにおいが鮮やかさを増した。自分も同じものを使っているのに、どうしてこんなにもどきどきと胸が高鳴るのだろう。トキヤはそれが以前から不思議だった。このにおいに興奮しているなんて知られたら、はずかしくてきっとしんでしまう。

「ひゃ、あ、んっ、……あぁあっ」
「トキヤ、きもちいい、カワイイ、すき…っ」
「…わたしも、です、おとや、すきです、すき、っあ!」
「〜〜っ、ヤバい、ほんといきそう、っん、トキヤぁ…」

音也の切羽詰った声がトキヤの耳に届いて、今までぴったりとくっついていた肌が離れた。熱い体温がなくなって、トキヤが不安そうに眉尻を下げる。けれどそれも一瞬だった。音也はトキヤの太ももを肩に担ぎ上げるようにすると、先程までとは比べ物にならないくらいの激しさで腰を前後させた。肌と肌がぶつかる音と、悲鳴とも喘ぎともとれないようなトキヤの声が部屋に響く。トキヤはまっかに紅潮した頬を隠そうと両腕をあげたが、長くは続かなかった。何かに縋っていないと本当に意識が飛んでしまいそうだった。トキヤの白くて細やかな指先は枕を経てシーツにたどり着き、その真っ白なキャンバスにいくつもの鋭角な皺を作った。

「ごめんときや、あ、も、イくね…、いっていい? ね、トキヤ」
「っ、はい、い、からぁっ、も、はやく……っ、わたし、も、いっしょに」

『一緒にイこうね』トキヤはくらくらするような快楽に翻弄されていても、挿入の直前に音也がそう言った言葉を忘れていなかった。シーツを握り締める指先が赤くなり、それが力の入れすぎで白くなっても、うまく息ができなくて苦しくなっても、必死に下腹に力を入れて射精を我慢していたのだ。音也はそのことに気付いた瞬間、今自分が抱いている恋人のことが今まで以上に愛しくてたまらなくなった。自分が言った言葉ひとつひとつを大事にしてくれる、可愛くて健気な、大切な恋人。

「――うん。一緒に、ね」

なぜかじんわりと目の奥が熱くなった音也は、担いでいたトキヤの脚を下ろし、ぐっとからだを前傾させて片手をトキヤの首の後ろへとまわしてやる。そこはまるでトキヤの体内のように熱くて、ぐっしょりと汗ばんでいた。空いた片手ではシーツを握りこんでいる指を一本一本大事そうにはがしてやり、かわりに自分の手を握らせる。きゅっと絡んでくる指に、言葉にできない愛しさを伝えるようにキスをした。

「トキヤ、あいしてる……っ」
「ぁ、〜〜っ!」

最後にトキヤのいちばん弱いところを抉るように突き上げてやれば、トキヤは声も出さずにびくびくと体を跳ねさせて吐精した。数回に分けて精液を吐き出す度にきゅうっと後ろが締まり、音也もそれに任せるように愛しいからだの奥深くへと精液を注いだ。一滴も残さないようにとゆっくり腰を前後させると、トキヤはその快感に耐えるように音也の首に腕をまわしてしがみついてきた。



****
「トキヤ、ありがとう…ほんとに、だいすきだよ」
「……はぁ、は、」

はぁはぁと荒い息がすこし治まってきたころ、音也は名残惜しさを押し殺して体温を分け合った肌を離した。指を絡ませたままだった右手をそうっと解いて、トキヤの額にはりついた髪を退けてやる。汗が滲んだ額にキスを落としながら待ってみても、返事は返ってこない。

「? トキヤ、大丈夫? ごめん無理させた?」
「いいえ、あの……」
「うん、どした?」
「きもちよかった、ですか? ちゃんとできていましたか? …初めてだったので、不安で…」

もしかして気分が悪いのだろうか、無理をさせてしまった?
音也の脳裏に一瞬浮かんだ心配は、どうやら杞憂だったようだ。トキヤは顔をいまだに紅潮させたまま、不安そうに眉を下げて聞いてきたのだ。

「〜〜っ、ときやぁ…」
「わっぷ、音也」
「気持ちよかったに決まってる。俺、もう、本当、すぐイっちゃいそうなの我慢してたんだよ」
「そう、ですか……」

音也の返事を聞いて、よかったです、とはにかむトキヤの表情はとてもとてもしあわせそうで、音也は恋人の周りに、ぱぁっとかわいらしい花がいくつも咲いたような錯覚を覚えた。

「トキヤ可愛い、だいすきだよ」

音也は、衝動のままぎゅうっと抱きしめキスをした。トキヤはそれをおとなしく受け入れ、私もです、と聞こえないように呟くのだった。




end

改定履歴*
20120730 新規作成
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