ふたりの、はじまり -2-
坊ちゃんにお仕えしてからもうすぐ2年。
毎朝目覚めの紅茶を淹れて、お着替えを手伝って、朝食をお出しして。お仕事にお勉強にとお忙しい坊ちゃんの傍らで資料をチェック、お客様がいらっしゃればファントムハイヴの名に恥じない最高のおもてなしを。そして時には女王陛下のお遣いをなさる坊ちゃんと共に裏社会へ。
先代の後を継いだとはいえ、まだまだ10つやそこらの子供。精一杯背伸びして女王のお遣いをこなす坊ちゃんを微笑ましく見守っていただけのはずだった。それが、それだけでない何かを感じるようになったのはいつからだろうか。
悪魔として生きた決して短くはない時間の中、はじめて感じた種類の感情が日ごとに膨らんでゆく。今となっては、毎日のお着替えや入浴のお手伝いをする時に余計な事を考えないよう、平常心でいられるよう努めるので精一杯だ。
馬鹿らしいと、自分でも思う。
主人と執事。人間と悪魔。――魂を食われるものと、食うもの。
自分たち二人を繋ぐ関係のどれをとってみても、結ばれる筈などないというのに。
そこまで考えて、ふと気付いた。『結ばれる』? 馬鹿馬鹿しい、なんだそれは。長く此処で生活をしすぎたからだろうか、思考まで人間臭くなってきた。ともかく、こんな想いを抱くことすら不毛なのだ。
さぁ早く、この目覚めの紅茶を我が主に届けるまでに、こんな雑念は捨てていつもの私に戻っておかないと。
更新履歴*
20110125 新規作成
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