『これが夢ならばどうか醒めないで。』
そんな、いつかどこかで聴いたラブソングのフレーズが、絶えず耳元で流れてる。勿論、それは錯覚に過ぎないのだけれど。
当時は、漠然とこんな恋愛がしてみたいなぁ、なんて思いながら、耳通りの良いメロディーを口ずさんでいたりもしたけれど―――。

数歩先を行く影を追い掛ける事、約十五分。
気遣いや思いやりと言った類に乏しい彼は、その歩幅を一向に狭めようとせず、帰り道、追いかけても追いかけても一向に縮まらない距離感に、何度も寂しさと不安を覚えたけれど、時折、こちらに振り返っては「早くしろ」と促す仕草がやっぱり愛しくて、わたしは、ローファーでアスファルトを蹴った。
 本当は、話したい事、したい事……沢山あった。
ひとつは、先程のやり取りを反芻しながら、好物のスイーツよりも甘い会話に酔いしれる事。そして、願わくば寄り添い合って、手を繋ぎたかった。
けれど、"先輩と後輩"の枠を超えてしまった彼との間には、不自然なぎこちなさが隔てられていて、ようやく追いつき、並んで歩いた時の僅かな接触にすら戸惑ってしまうわたしがいた。
僅かな距離すらもどかしく、刹那の沈黙に戸惑いは隠し切れない。
 ――どうしよう。何か話さなきゃ。何か、何か。
 町並みの向こう側、死にかけた太陽の鮮烈な紅が眩しくて眸を細めた。前方で悠々と靡くブラウンの髪が透けて見えて、そしてそれがとても愛おしくて、思いがけず抱き着きたい衝動に身を焦がした。 恋をするって、こういう事なのですね。

「じゃあ、わたしはここで失礼します」

紅焼けに照らし出された分岐点。わたしは右の道を、蓮先輩は左の道へ。
まるで永遠の別れを強いられたかの様な、引き裂かれんばかりの感覚。こんなに切ない感情は、いつだってあなたに向いているのだと言う事、ちゃんと伝わっていますか?
言葉にするには、まだ時間がかかりそうだけれど……。
 暫しの間を置いた後、「寄り道せずに帰れ、いいな」と釘を刺す低音が、これ以上にないくらいに甘くて、思い違いでも何でも良いから、今直ぐにでも叫びたい。
本日、PM16:48、わたしは先輩の恋人になったんだって!

「あ……あの、先輩!」

愛おしさが膨れ上がって、後ろ髪を追い掛ける様に名前を呼んだ。いや、正しくは叫んだと言った方が明解かとも知れない。
振り返り、こちらを見据える眼差しに重度の眩暈を覚える。
一般的な見解で言えば、誰もが怖じ気付く程の、その、冷たくて鋭い眼が好き。好き、好き。大好きなのです。

「あ……あの、今夜、メールしても良いですか……?」

別離の瞬間、投げ掛けた質問に対する明確な応えはなかったが、その代わりに僅かな微笑が彼を彩った事で、彼が何を意味して踵を返したかを瞬時に悟った。些細な事に、泣けてしまうくらいに舞い上がってしまうわたしは馬鹿なのでしょうか?

 アロマオイルを垂らした浴槽に全身を浸し、ベルガモットの香りに溺れながら本日の経過を辿る。
家の玄関を開けてから自室まで、足取りは安定性に欠け、ふわふわと宙を行く感覚がその後、暫く続いた。今現在も然り。

 わっ、わたし、先輩の事が、す、好きです!
 ああ。
 だから、あの、その……。
 "付き合って下さい"、って?
 は、はいっ!わたし、先輩の彼女になりたいんです!
 構わない。
 ――……へ?!
 
 もっと洒落た言い回しは無かったのかなあ、とか、少女漫画の様なロマンティックさに欠けていたかなあ、とか。
 求めていた結末が、あまりにも突然に訪れたものだから、嬉しさ反面、どうしたら良いか判らなくもなる。
 顔半分までを湯に浸し、眼前を行ったり来たりする落ち着きの無いアヒルの玩具を何となく指で突いてみた、その時。

 脱衣所にて所持者の帰りを待っていた携帯電話が、特定の人物からの着信を報せるべく個別メロディーを奏でた。
 わたしは、慌てた動作で濡れた体躯にバスタオルを巻き付け、本機に水滴を落とさぬ様に気を払いながら通話ボタンを押す。

 「せ、先輩?!」
 『ああ。』
 「どうして、えっ、先輩?!ど、どうしたんですか?!先輩から電話なんてっ!」
 『貴様の方こそどうしたんだ』
 「っせ、先輩から電話してくれるなんて思わなくて、びっくりしてしまいました……っ!」
 『違う。俺が言ってるのは、さっき、貴様から届いたメールの件だ。』
 「へ?」
 『何だ、あのふざけたアドレスは。』
 「ああ!」

 意思の疎通を果たせた事で、わたしの表情が見るからに開花する。
 それは受話器越しにいる想い人にも十分に判り得る事で、彼の溜息は深まるばかりだ。

 「わたしからの、ささやかな愛情表現です」

 気恥ずかしそうに、けれども嬉しそうに。声音を弾ませる少女に、本日、何度目かもわからない溜息が彼の唇から漏れる。

 「だって、嬉しいから……。世界中の人に自慢したいくらいなんです。わたしは先輩の彼女なんだって!」
 『…そうか、勝手にしろ』
 「あ!一層、先輩のアドレスも『しない。』

 一世一代の閃きも、どうやら彼の趣向には合わなかったらしく、わたしの提案は呆気なく棄却されてしまった。
 けれど、こんな結末も想定外。

 『でも、これだけは言える。』
 「え?」

 丁度、携帯電話を持ち替えた瞬間、耳打った低音がタオルドライをして居た手を止める。

 『この先、貴様は一生、このアドレスを変更する事は出来ない。』

 俺が貴様を離す訳がないからな

 わたしの頬に、涙の痕。嗚呼、もうどうして。
 また、泣かされてしまった。与えてくれる言葉の全てが嬉しくて、時折垣間見せるらしくない一面が好き過ぎて。


 『此れが夢ならばどうか醒めないで。』
 偏に願った。
 あなたと歩む最高の日々を―――……。









 20131020
 Happy birthday!!
 Dear MISA chan.
 Presented by ALIKO.



うふふふ・・・うふふ(*´∀`*)←

なんと。なんとですよ。

愛しのマイハニー☆アリコちゃんが、美砂の生誕祝いにと、蓮由で小説書いてくださったのですようふふふふふふふf(←変質者か

しかもしかも、お忙しかったでしょうに、この小説をイメージしたイラストまで用意してくださったんですもう結婚するしかないよね蓮由!

彼氏との愛の証のメールアドレスVv
それはまさに乙女のロマンですね(*^p^*)

このピンクの背景に並んだ文字は、アリコちゃんが作ってくださったものですうふふ(*´▽`*)
このアドレスが蓮くんのケータイに届いたわけですよ♪
そりゃあ蓮くんビックリしただろうなw
でも不機嫌なフリして実は萌えたんだろwおぉん?そうなんだろ。おぉん?w←←

なんて乙女チックな展開(〃∀〃)
こんな素敵Storyを書いてくださったアリコちゃんこそ可憐な乙女だマジで!らぶっVv

こちらは、二次創作というスタイルで書いてくださったそうで・・・!
っていうかそんな畏れ多いじゃないですか!嬉しいじゃないですか!こんなにも愛してもらえてる蓮由は幸せになるしかないじゃないですか!

実際の蓮由はというと、未だ付かず離れずのモジモジ状態ですけどもw
早くなんとかしてあげたいですw

アリコちゃんVv
この度はこんなにも素敵なプレゼントをありがとうございましたVv

まさかのラブラブStoryまで書いていただいて感謝感激です♪

大切に大切にしますね(*^▽^*)**





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