神様の死んだ日みんなはとても悲しんで、思い思いに花を捧げた。
手向けられた花があまりに多く、森になった。
灯台守灯台は、航海者の為に何時でも海を照らしてい た。
灯台守は、きっとこの光を見る者はいないだろうと、今夜こそ灯火を消そうと思ったが、光が消えて困る誰かがいるかも知れないと思うと光を消す事を躊躇いながら朝を迎えていた。
毎日、今日こそはと思いながら明日を迎えてい た。
ある日、友人がいつもと違う格好で訪ねて来た。
背中に重そうな荷物を背負って、地図を握って彼は海に出ると言った。
この灯台がある限り、どこまでも行けるしどこからでも帰ってこられる。
そして小さな舟に乗って振り返らずに海に出た。
灯台守はもう迷わなかった。
たった一人の為に灯台は今日も海を照らし続け る。
獣王子王子は欲しいものは全て手に入れてきた。 譲って貰えなければ奪えばいい。王子には容易いことだった。
王子は旅人が持っていた星を閉じ込めた硝子玉を見て、一目でそれが欲しくなった。大金を積んでも宝石を並べても旅人は首を縦には振らず、王子の国を後にした。
旅人を見失った王子は、同じものを持つ者がいるという噂を聞き、兵士を連れて力尽くで奪い取った。
傷を負い、眼を奪われた龍は王子に呪いをかける。
野獣のような心を持つ王子はその心に見合った姿形になるがいい。
多くの兵を失った王子は星を手に入れて意気揚々と帰途につく。けれど城に着く前に王子は獅子の姿に変わっていた。
国民は逃げ惑い、兵士に矢を射かけられ、這々の体で逃げたかつて王子だった獅子は怒り狂い、両眼を失った龍を探すが、龍は既に行方を眩ましていた。
その喉をこの牙と爪で引き裂いてやらねば溜飲は下がらないと獅子は龍を探し回る。
手に入れた星の眼をいつの間にか失くしていたがそんな事には気付かない。
虹のつくりかた旅人は泣いていた。
重い荷物は持っているだけで苦しさが増すばかりだった。だから世界の果てに全部捨ててきた。
その場所を忘れる為に、道筋を記した地図を砂漠の真ん中に埋めた。
これで思い出すこともなくなるだろう。
旅人は空を見上げて虹を見つけた。世界の果てから伸びているのではないかと思うほど、とても大きな虹だった。
虹は砂漠の真ん中に下りてきて、旅人が埋めた場所にきっちりと着地した。
捨てた荷物はとても大切な思い出ばかりだった。持っているだけで辛いのは、大切なものにはもう思い出のなかでしか逢えないとわかっているからだ。
捨てたものは全部宝物だった。
旅人は世界で一番嫌われていたので、涙が川を 作って海になるまで泣き続けても止める者もいなかった。
新しい神様神様が滅んで暫く経った頃、そろそろ新しい神様を決めようと北極星が言った。
星たちは地上を見下ろして彼女がいいのではと薦めた。
星たちは、世界で一番嫌われた人の傍で、世界で一番嫌われた人の為に毎日美しく咲く華を知っていた。
華は世界で一番嫌われた人が世界で一番好きだった。
世界で一番嫌われる人を好きになれるなんて誰にも真似できない。
彼女こそ神様に相応しい。
一番小さな星が神様に伝えに行くと、地上ではみんなが神様にお祝いを言った。
世界で一番嫌われた人は、神様をひとりじめしていたかったが誰よりも永く生きていたのでそうしてはいけない事も知っていた。
世界で一番嫌われた人が近くにいるのにとても遠いところにいってしまったことに気づいて、世界で一番愛される神様は泣き出した。
「わたしは とても さびしい」