流れ星


地上に降りた星は、空に帰れずひとりぼっちで泣いていました。
どんな大きな木の枝に乗っても、空には到底届きませんし、雲が空を覆ってしまうと空の星たちが見えなくなって、星は余計に悲しくなって毎晩泣いていました。
ある晩、泣き声を聞きつけた旅人が星の元に訪れて言いました。
ランプが切れて困ってたんだ。枝で光ってるだけなら一緒に行かないか。
星はなんて失礼な人間だろうと思いましたが、誰かと語り合ったのは久し振りだったので、ついその誘いに同意しました。
狭いランプの中は決して快適とは言えませんでしたが、どんな荒野も、砂漠にも負けず、とても遠い所から聞こえる泣き声だけの為に訪れた旅人に星は何もいいませんでした。

消えない灯火があるから大丈夫だ。

誇らしげに旅人は星を掲げ、嵐の海に舟を出しました。



2013/02/16 ( 0 )





最果てに捨てる


背負った荷物を捨てる場所を探していた。
とても大きな荷物だった。歩くたびに足が地に沈むような重さだ。
この荷物を二度と戻ってこないような場所に捨てたかった。
そこまで行った者で帰ってきた者はいないという場所に。
捨てるならそこしかないと思った。

世界の果てまでもう少しだ。



2013/02/16 ( 0 )





海水アレルギーの人魚


人魚は王子に恋をして魔女に足が生える薬を貰ったが魔女が作った薬はヒレが足のように二つに別れるだけのもので陸に上がれなかった人魚は海に戻ろうとしたが薬の副作用で海水アレルギーになった鱗がとても痛むので海を懐かしみながら泣き暮らしていると嵐の日に星を携えた船乗りが難破して底の破れたような舟でそれでも海に戻ろうとするので人魚が住んでいた小屋を解体した木材で舟を補強してやると帰るところがないなら一緒に行こうと船乗りは人魚を船に乗せ星を掲げて青空の広がる海原に船出した。



2013/02/16 ( 0 )





ひとりきりの人


その人はみんなから嫌われていた。

何故なら、ひどく臭かったからだ。

誰も近くに近寄れなかった。

だから花を育てた。



2013/02/16 ( 0 )





龍に眼を貰った男


呼ぶ声が聞こえた。
旅人は声を辿って声の主に出会った。
どうやら古傷が痛むらしい。その上、水に渇いているとも言う。
旅人は薬と水をわけてやった。
声の主はいたく感謝して、御礼に何でも欲しいものをあげようと言った。
この目が見えるようになったなら、見たいものは幾つかあった。
それならばと声が言った途端、旅人の目に光が刺さる。旅人の前には片眼の無い龍がいた。
片方とはいえ眼を欠いた龍は天に戻ることができない。
旅人は見たいものを見たら必ずこの眼を返しにくると誓って龍と別れた。



2013/02/16 ( 0 )




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