1.授業中指されて戸惑っていたら
助けてくれた「では、次の問題を猿飛」
「ええっ。いきなり俺!?」
教室のほぼ中央で完全に気を抜いていた佐助は慌てて教科書を開く。
「席順や番号で選ぶと思うのが甘いのだよ」
「うぅ…」
「Hey Teacher!それharassmentじゃねェのか!」
バン、と机を叩いて席から立ち上がり、何故か政宗が猛然と抗議する。
「何だね伊達の。何か問題があるかね」
「あるに決まってんだろ!」
頭の上を行き交う会話にもっと時間を稼いでくれと感謝しながら佐助は教科書を見つめる。
「この位置じゃ佐助のCuteな困り顔が見えねェ!! 席替えを希望する!」
「あんたの方がセクハラじゃねぇの!? 俺の顔見てどうなるってんだよ!」
「抜ケる」
「 うわ、びっくりした。先生、クラス替えを切望します」
「先生は早く答えて欲しいのだがね」
「うっ……」
思わず立ち上がって突っ込んだ佐助は、教卓に肘をついて呆れ顔の教師にさらりと返され言葉に詰まる。
「Mr.!とりあえず代わりにオレが答えるから、オレを佐助の隣の席にしろ」
「授業が進まないので承諾しよう」
「マジで」
「猿飛には罰として課題をやろう。放課後にやりたまえ」
「ぐぇ」
「Don't worry.課題も付き合ってやるから」
「伊達ちゃん…」
教科書相手に手も足も出なかった佐助は授業中に自分の荷物だけ持って本当に隣の席を陣取る政宗に嫌だとは言えず、隣の席にいただけで無理矢理どかされた無関係の級友を気の毒に思った。
「問題が解けずに悶々とする様を延々眺めててやるよ」
「俺何一つ助けてもらえてないよねー?」
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授業
中指されて戸惑っていたら助けてくれた
2.放課後の教室で
想い人の席に勝手に座ってみたところ
本人に目撃された「あーあ、ホントに課題くれなくてもいいのに…あれ?旦那知らない?」
「信玄センセーんとこ行ったけど?」
「えー。じゃあすぐには帰ってこないなー」
傷心の佐助が問うと慶次が帰り支度をしながら答えたので、よっこいしょとか言いながら佐助は空いていた席に座った。
「佐助!てめ何で教室にいねェんだよ!」
ちょっと寝ようかなと机の上にあった鞄を枕に引き寄せると政宗が喚きながら教室に入ってきた。
「放課後なんだから帰るに決まってんだろ」
「課題付き合うって言っただろうが」
「あ、そっか。提出明日でいいって言われたから家でやるつもりで」
「そんな急に言われても部屋の片付けとかできてないし」
「誰があんたの家でやるって言った」
わざとだとわかっていても腹が立つものだなと、あたふたと色めき立つ政宗を眺めて思う佐助の傍らに立って政宗は大きくため息を吐いた。
「man-to-manで見てやるのに」
「顔を?」
「顔だけじゃ不満だと?」
「いいや。見るな。」
指で顎を取られて上を向かされた佐助がその手を思い切り抓ってやると微妙に痛かったらしく政宗はふるふると手を振っていた。
「っつーか帰るんじゃねェのか」
「旦那と一緒に帰ろうと思って待ってる」
「なんだそれsuper言われたい!」
「心の声がだだ漏れですが」
「って事はそこ幸村の席かよ!立て!」
政宗は、真顔で何叫んでんだと軽く引いていた佐助の腕を掴んで力任せに立ち上がらせた。
「やめろよー何だよー」
「そこで待ちくたびれて眠ったりなんかしたら、始まっちまうだろうが!」
「いっそ終わるんじゃねぇ?」
「ああそうかオレが幸村の席に座るからオレの膝に佐助が座れば」
「クソ聞いてねぇし」
佐助を立たせた席に代わりに座って腕を広げて待つ政宗を無視して佐助は机に腰を下ろした。
「…何ひとの事見下してんだテメェ」
「あんたが立たせたんだろうが」
「佐助!何をしている!」
「旦那?おかえ、え?ちょっ待、ッで!」
目を爛として現れた幸村は教室に入った瞬間にそう叫ぶと、勢い机を弾き飛ばしながら佐助の側まで走ってきて頭突いてから、改めて叫んだ。
「机に座っちゃいけません!」
「…………、…はい…。」
まさか出オチ、と佐助はぶつけた額を腫らしながら力無く机の上に臥し、政宗は散らかした机と椅子を誰が片付けるんだろうと椅子に座ったまま考えていた。
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放課後の教室で想い人の
席に勝手に座ってみたところ本人に目撃された
3.重い資料運びをしていたら
さりげなく手伝ってくれた「うっわ佐助それ重たそうだなぁ!」
隣のクラスから辞書を借りに来た慶次が、教室の入り口でノートの山を抱えた佐助とすれ違って声をかけた。
「重たいよ手伝ってよ」
「えーやだなぁー」
「さいてい!」
「まぁまぁ、働き者の佐助にはご褒美をやるか ら」
言いながら政宗が、近いが決して腕の届かない距離から近づかない慶次と佐助の間に割って入る。
「胡散臭!何?」
「オレん家の鍵」
「ギャー!やめろ勝手にポケットに突っ込むなバカー!」
いそいそと政宗に胸ポケットに鍵を突っ込まれ佐助は塞がった両手の代わりに足で地団駄していた。
「いつ住んでも構わねェぜ」
「絶っ対行かねェ!」
「お前が来ないとオレが家に入れないじゃねェ か?」
「知るかよ!そんなもん人に渡すな!」
「It's joke.ほらあーん」
笑いながら政宗は有無を言わせず、喚いていた佐助の口に取り出した飴玉を放り込む。
「飴ちゃんかよー」
「ご機嫌じゃん」
「実際小腹空いてたんで」
「じゃあついでにこれも持って行け」
「なんで!?」
政宗に抱え持っていたノートの上に更に授業で使用した教材を積み上げられ、慶次に呆れられながらも飴玉一つで浮上していた佐助の気分が一気に不機嫌に戻る。
「今tipやっただろ」
「俺を労ってのご褒美じゃねぇの!?」
「それはさっき」
「…鍵かよ!? 返すわ!! てか冗談だって言ったじゃん!」
政宗に胸ポケットの上から指差され佐助はあからさまに蒼白になったが、逆に政宗は肩を竦めて微笑んだ。
「それは合い鍵だから無くても家には帰れる よ?」
「何でかわいこぶってんの?」
「なんだと佐助以上に可愛い子なんて打ってねェ」
「会話にならないんですけどー」
「それって佐助以外を打ってんの佐助がぶたれてんのどっ」
言い終わる前に慶次の顔に辞書を叩きつけた政宗はもう片方の手に二人分の教科書を掴んでいた。
「次の授業移動だろ?お前の荷物持って行っててやるから」
「そんなので差し引きにならないからな!」
言いながら全部持って行くんだなと政宗は歩いていく佐助の背中を見ながら思い、顔を押さえながら廊下にうずくまる慶次には見向きもしなかった。
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重い
資料運びをしていたらさりげなく
手伝ってくれた
4.席替えで二度連続隣りの席になった「全員席決まったな。後ろの方、黒板見えにくい奴いるか?」
「先生ー」
「どうした猿飛」
出席簿を見ながら言う教師に佐助が手を挙げて訴えた。
「前の人の顔しか見えません」
「目の保養になって良かったな」
「親バカだな!」
出席簿から目を離さず応える教師に佐助は机に拳を叩きつける。
「担任に向かって馬鹿とはいい度胸だ。今学期の成績は捨てたらしいな」
「ごめんなさい。いやけど担任なら生徒の迷惑も考えてよ!」
「それもそうだな。政宗様、その体勢ではノートが取り辛いから前を向いてお座り下さい」
名簿を閉じてやっと顔を上げた教師は佐助を見ずにその前に後ろ向きに座る後頭部に語りかける。
「断る」
「諦めろ猿飛」
「もっと粘れよ!ふざけんな俺が授業にならんわ!」
即答で進む会話に佐助が猛り立つと政宗も佐助同様立ち上がって吠えた。
「オレより小十郎の顔の方が見てェのかよ!?」
「なんだ惚れたか?悪いがお前は趣味じゃない」
「その気も無いのにフラれた感じがムカつく」
教師に鼻であしらわれ前の席の政宗は鼻息が荒いしマトモな奴はいないのかと佐助が諦めかけたその時、佐助の斜め前で元親が手を挙げた。
「ハイハイ、こじゅろー!オレ提案」
「学校では先生と呼べと言っただろうが」
「このままだと永遠にHRが終わらないから、佐助オレと場所替わろうぜ」
「えっほんと?」
振り向いて爽やかに言う元親に佐助は一瞬ときめいたが手荷物がシャーペンだけなのを見てやっぱりダメだと思った。
「黒板が見えるだけ政宗の顔よりマシだろ。こじゅろーいいだろ?」
「…仕方無ェな」
「元親に甘ェな小十郎」
「申し訳無い。つい気が緩んでしまいまして」
「フラれた体の俺の立場がないんですけど?」
三人の会話に感じたくもない疎外感を感じながら佐助は席を立ち、すれ違いざまに元親に肩を叩かれた。
「小せェこと気にすんなよ佐助」
「ありがとーチカちゃんー、って、隣かよ!!」
元親の席だった場所に移動した佐助は笑顔で真横に居座る政宗に思わず全力で突っ込んだ。
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席替えで二度連続隣りの席になった
5.同窓会で初恋の人と再会、
実は両想いだったと発覚「お館様の言い付け通り、寄り道せずに帰るぞ佐助!」
「ガキかよ」
「何で伊達ちゃんもいんの?」
「Ah?あれ慶次じゃねェか?」
大手を振って歩く幸村に突っ込んだ政宗が佐助に突っ込まれて聞き流した先に慶次を見つけて指差した。
「あっほんとだ。うわ彼女と一緒!?」
「おーい!佐助!こっち来いよー」
「佐助がいるなら私は帰るぞ」
慶次が手招きして言うと隣に立っていた女が吐き捨てた。
「かすが殿!」
「かすが!久しぶりー今日も美人だね付き合わない?」
「相変わらず虫酸が走る軽薄さだな」
嬉しそうに駆け寄った佐助を鞄で払い除けて幸村と挨拶を交わすかすがを見て慶次はなごやかに笑う。
「なんか同窓会みたいだな」
「へ?なんで?」
「全員同中だろ?」
「嘘ォ!全然記憶に無いんだけど??」
「こいつとそれは転校してきたからじゃない か?」
慶次の発言に佐助が驚くとかすがが慶次と政宗を指しながら応えた。それを聞いた政宗が慶次を示しながらかすがに言う。
「それは転校じゃねェだろ」
「『それ』は貴様だ」
「…あァ?」
「…ハァ?」
睨み合う政宗とかすがをペロリと無視して慶次と幸村が佐助に説明を続ける。
「俺は中学入学前に引っ越してきたからね!」
「慶次殿の事は覚えてないが政宗殿は小学校の時転校してきただろう」
「そうだっけ?転校生なんてすごい可愛かった子がいた事しか覚えてない。いつの間にか見なくなったけどー、可愛かったよねェ?」
「Thank you」
「何であんたが礼言うんだ?ってまさかの?」
黙って頷く政宗に佐助は綺麗に微笑み返すと、突如その場に崩折れた。
「うそだろぉぉぉ」
「断末魔?」
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同窓会で初恋の人と再会、実は
両想いだったと発覚