Xmas …続 (伊真?)「政宗殿政宗殿!」
雪のちらつく庭から幸村が声を掛ける。
「くりすますとは何の祭なのでござるか?」
縁側で火鉢を側に置いて座っていた政宗は白い息を吐いた。
「Christのbirthdayだな」
「は?」
「異国の偉いオッサンの生まれた日だ」
火鉢に手を翳しながら、庭で松を飾りつける慶次を見やる。
飾り付けさせる為に呼んだのだが甚だしく間違えているのはどうしたものか。
「祭になるほど偉大な御仁なのでござるな…」
いずれはお館さまも…と目を輝かせる幸村に政宗は一瞥もくれない。
「形だけだけどな」
緑がある木だから別にいいかと慶次から視線を外した。
「sweetの日だからなァ」
「はぁ、…?」
意味が分からない、と首を傾げながら幸村が隣に腰掛ける。
「ah…だから……特別な日なんだよ」
どう説明したら破廉恥と叫ばせないで済むかと考えながら幸村の後ろ髪を指に巻きつけた。
「政宗殿?」
くるくると自分の髪を弄びながら黙り込んだ政宗を覗き込む。目が合うと、政宗はにやりと笑って幸村の耳元で囁いた。
「…手取り足取り教えてやろうか」
何を、と問う前に吹き込まれた声音に思わず緊張が走った。返答に窮している幸村の目前で政宗は手の中の髪に口付ける。
「真田の旦那ー」
降って湧いた佐助の呼び声に、幸村は勢いよく立ち上がり政宗を置いて声も無く廊下を走り抜けた。
厨にいた佐助は、走ってきた幸村に手の中のものを差し出して笑いかける。
「旦那、味見してみる?」
反射的に佐助に勧められたものを口に入れて幸村はその場に膝をついた。
甘ったるい匂いを嗅いで喜ぶかなと思った佐助の予想に反して、幸村は心臓と口を押さえて呻く。
「……吐きそうだ…」
「え!?」
予想外の反応に青褪めた佐助は、言った幸村の顔の尋常でない赤さに気づかない。
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