長篠銃撃戦 VS伊達軍


「騎馬隊全滅ぅ?」

自分でも意外なほど驚いたような声が出た。

「まずいね…とりあえず、大将に報告して」

報告に来た男に、背にした門を示す。

「…旦那大喜びなんだろうなぁ」

あの人は強い武人と戦うのが好きだから。
呟きながら、報告に去った男が門を閉めた音を聞いた。自分の仕事は門を守る事で。今回は騎馬隊もいるし、自分の前には真田幸村もいる。
旦那が負けるなんて考えられないし。楽な仕事だと思ったのに。

「さーて、どうしようかぅわあっ!?」

何か蒼いものが物凄い勢いで突っ込んで来たから思わず仰け反って避けた。

「long time no see,Honey」
「ど、独眼竜…」

人の顔面に切っ先突っ込んでおいて呑気に挨拶かこの野郎。…挨拶か?

「…って、あんたが此所にいるって事は真田の旦那は!?」

言いながら、手裏剣を出して顔の横にあった刀を弾いた。手元で操って刀を引き寄せ、独眼竜はにやりと笑う。
嗚呼、旦那!鬨の声が無かったって事は敗れたわけではないだろうけど。今すぐ旦那の元に行きたいが自分の仕事は門の死守。こうなったら竜を瞬殺して旦那の所へ行くしかない。と思ったら。

「独眼竜殿ー!!!」

え。
声に振り返れば、真田の旦那が物凄い勢いで駆けて来た。
元気じゃん!ってゆーか、槍がこっち向いてんですけど。烈火?俺さまに向かって烈火する気!?

「う、あ、やべっ」

前から雷、後ろが火事。
ああ俺さま死んだーと諦めたら、竜が体当たりして押し倒された。頭上を炎通過。

「ぅゎ……えっと、…ありがと…?」

一応礼を言う場面かな。言うと、一緒に倒れ込んだ竜が笑う。

「No problem! Now I will do」
「は?」
「結果all rightって事さ」
「何言っ…わーっ!! 何してんだあんた!?」
「大人しくやられてくれよ」

言いながら人の服脱がせようとすんな!ってゆーかあんた刀どこやったんだよ!

「佐助!」

勢いで通り過ぎた旦那が戻ってきた。

「旦那!」

こんな体勢で説得力も無いけど、無事で良かった!

「お前ばかりずるいぞ!」
「っはァ!?」
「某とも勝負してくだされ独眼竜殿!」

…勝負してるように見えるのかこれが。

「下がってろ真田、今は忙しい」
「何故佐助ばかり!? 某とも一戦!」
「お前は後だ」

何の会話だと思うが、今のうちに竜の下から逃げようと腹這いになったら鼻先に白刃が煌めいた。

「お仕置きして欲しいのか?」

前に出れば地に突き刺さってる刀で鼻が消失。上には独眼竜。こんなしっかり捕まってて影潜はできない。

「…あんた大将の首取りに来たんじゃないの?」
「信玄公?門の先にいるんだろ」
「なら」
「門が破られない限り出て来ない」

上から爽やか〜に笑って言われた。

「…そうじゃないだろ!?」
「Why?今日はあんたを貰いに来たんだぜ」

やばいこの男目が本気だ。

「嫌だー!! 旦那!なに正座してんの!倒しちゃえこんな変態!」
「だって某は後でって言…」

それでなんで素直に座って待ってんだよ!?

「俺が独眼竜に喰われてもいいの!?」
「何!? 独眼竜殿!お止め下され!」
「ぐえっ」

旦那が竜に突撃して止めに入ったが、重みが増しただけで状況は全く好転しない。

「shit!放せ真田!動けねぇだろうが!」
「なりませぬぅー!佐助など食ったら独眼竜殿の腹に悪うござる!」
「意味が違う!」

俺は食われてもいいんだ。ひどい旦那。

「おも…いた…」

竜に肘でごりごり押しやられながら旦那は必死に竜の腰にしがみついて止めていた。
俺の上で。

薄れゆく意識の中で、絶対退職願出してやると誓ってみた。
戦国武将なんて滅んでしまえ。




2014/10/10 comment ( 0 )







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