風の病


「知ってる?人間は呼吸出来ないと死ぬんだよ」

後頭部を壁に擦りつけて、濡れた目で佐助が呟くと政宗は一つしかない目を大きく瞬かせた。

「だから?」
「息が苦しいって言ってんだよ」

不機嫌な声で言って、異様に近くにある顔を持って来た書簡で叩くとそのままその手紙を政宗の懐に差し入れた。
その手を掴んで壁に押しつけながら政宗は言う。

「オレだって息が為難いの我慢してやってんだぞ」
「我慢すんな。あんたがやめれば済む話だろ」

佐助は足の裏で押し退けるように政宗を蹴りながら抵抗を示したが、逆に脚の間に体を入れられて動きを封じられてしまう。

「お前がそんな熱っぽい潤んだ目で誘うから」
「っぽいんじゃねぇの。熱があんの。鼻声だろ聞けよ」
「感染せば治るっていうな?」

笑いながら、政宗が意図を持って佐助の着物に手を差し入れると、佐助は息を詰めながら身をよじった。

「ソレ治る頃に発症してるだけだろ…も、やめっ…ッ…だ、るい……」

言いながら、佐助は壁に背を擦りながら崩れ落ちるように座り込んだ。片膝をついて政宗は佐助の肌を撫で回し、熱が尋常で無く高い事を悟る。

「…休めよ……つか寝てろ」
「いいんだよ。病は気からって言うだろ」
「気が足りてねぇから風邪ひくんじゃねぇのか?」

馬鹿か、と呆れた顔をする政宗に佐助はつん、と顔を逸らして答えた。

「忍びは風邪なんかひかないんです」
「…そんな仕様もない見栄の張り方するからだ馬鹿野郎」

脱力した声で言って、政宗は座っていた佐助の両足を掴んで引き摺りながら部屋を移動する。
敷居を跨ぐ度に肩や背中から鈍い音を出して痛いと言う佐助を無視して、辿り着いた一室に敷いてあった布団に転がすように投げ捨てた。

「…なんで真っ昼間に布団敷いてあるんだ」
「返事書くからそれまで居ろよ」
「無視か。いつ?」
「明日、…以降」

言って、佐助を見ると手足を投げ出して仰向けのまま政宗を睨み付けていた。

「? なんだよ」
「…礼を言うか悩んでる」
「何故悩む」

催促するように足蹴にする政宗に佐助は眉間に皺を寄せつつ一人で納得して呟く。

「言った後の展開がさー……まーいいか。うん。……ありがと」

視点も朧気に潤んだ目で照れたように佐助に囁かれ、上に掛けてやろうと布団を捲っていた政宗はそのまま佐助に覆い被さった。

「そんな無防備で上目遣いとかなんて挑発」
「ほらやっぱりだ、もうほんとに、クソが!」

息苦しさに喘ぎながら、佐助は最後の力をふり絞って政宗の横面を張り倒した。


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後日、おもいきり感染した筆頭が小十郎だぜに叱られながら寝込むけれど見舞いにも来やしない忍と、
逆に様子を見に来た忍がちょー健康な筆頭に元気に襲われてあわわアレは風邪ひかないってマジですか怖!って引くという、
どっちが政佐っぽいかなと。どっちも違うと言われたらぎゃふん。




2014/10/10 comment ( 0 )







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