はじめまして。×××××です、よろしく。

教壇から教室を見渡して名乗っていた名前は未だに思い出せないし記憶出来ない。
親の転勤で転入してきた少年は印象の良い笑顔の作り方を知っていて、生まれつきだと言う派手な髪の色は染めてしまうよりは覚えて貰い易いだろうとの大人達の配慮でそのままだった。
子供特有の我儘や癇癪は持たず、共働きの親の心配の為にだけ携帯電話を持ち、放課後の校庭で下校する生徒達を一人きりで眺める。友人の遊びの誘いには乗るけれど誰かの家には招かれたりしない。
いつも誰かといるのにいつも一人だった。
声を掛けたかったが別人だった場合が問題だ。今も昔も変わらず側にいる先達からは、ひけらかす必要は無いと教えられていた。
そんなものは常人は知りません、昨夜見た夢のようなものだと思う程度がよろしいでしょう。過去に縛られるのは愚かな事なのです。
彼がいたから昔の事だと割り切れたし、一人で悩むことも無かった。それでも懐かしい事にも違いはなく、けれどもしも相手が覚えていなかったら。そうして何もせず時間を浪費していたあの日、放課後いつも少年が一人でいるのは誰もが知っていた。可哀想などと幼稚な親切心で子供達は一緒に遊んでいたのだが、一人二人と所用を思い出したり親が迎えに来たり数が減っていく中、他の子供達の親と同じ様に自分を迎えに来た男を見て思わず昔の名を口にした。
瞬間、さっきまで笑顔で先に帰る子供達を見送っていた少年の形相が変わり、やはりと思った時には既に体は宙に浮いていた。場所が悪かった。ジャングルジムの上になど立っていたから、両手で突き飛ばされて情けない事にその後は意識を失ったらしく気がつけば病院で片腕にギプスを装着させられていた。
その日の夜、菓子折りを持って必死に頭を下げる親の隣で憮然と佇む少年の傍らに、いるはずの誰かを無意識に探していて、誰もいないよと言われて己の無神経さに気がついた。当然の様に謝罪の言葉が出た事にまた突き飛ばされて、苛めじゃないのかと躍起になる親達を後目に少年に言ってやった。
オレにはあいつがいるけどアンタにはオレしかいないんじゃねぇのか。

少年はそれはもう愛くるしい憤死しそうな顔をして、もう一度死ねと叫んだ。


揃いも揃って死に損ない


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ペラペラなふたりで支えあっていきる/飛んでいってしまいそうだ の出会い編
転生ものが好きなものでごめんして下さい\(+×+)/




2013/05/06 comment ( 0 )







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