2.突然の雨に濡れ、
彼の家に寄ることに三人は自転車で土手までやってくると空を見上げていた。
「曇が出てきたな、佐助」
「誰かがやる気の上昇気流出してるから雲を呼ぶんだよ」
「オレかよ?幸村もだろ」
二人に溜め息混じりに言われ政宗は心外だと答えるが、顔に雨の滴が当たると顔を顰めた。
「降って来たようだしな」
「雷背負ってる奴がいるから狙い撃ちで降るよ」
「オレしかいねェ」
幸村の落とした肩を叩きながら佐助が言い、政宗は空を睨んで尋ねた。
「…雨止むまでオレん家行くか。近いし」
「自宅の方が近いのに迎えに来たの?わざわざ?」
驚いて振り返った佐助に政宗は鼻で笑った。
「わざわざ来るんじゃねェよとか思ってんだろ」
「うん」
「( ●д´)、 ペッ」
「汚ねッ!」
躊躇なく唾を吐かれ佐助は思わず飛び退く。
「おなかすいた」
二人のやりとりを無視して幸村が腹を鳴らしながら言うと、政宗は自宅がある方向を指差した。
「貰いものだがケーキ食うか?」
「はい!」
「寝る前にそんな高カロリー食べたら太るよ」
「女子か」
大きく頷く幸村に佐助が呆れ気味に言うと政宗が興味も無く呟いた。
「寝なきゃいいじゃん!」
「無理だろ!既に半分寝てるくせに!」
拳を突き上げ高らかに言う幸村に思わず政宗が突っ込んだ。
「そーゆー問題じゃないんだけどなんかもうどうでもいいやー」
「いきなりどうした」
「佐助?」
「うん…」
突然投げやりになった佐助に驚いて政宗と幸村が振り向くと佐助は俯いてじっと手を見る。
「爪切りが途中だったから違和感が拭えない」
「女子か!」
「切ったばかりの爪の威力」
「痛ってェ!」
心配して損したとばかりに怒鳴った政宗の顔を引っ掻いて、佐助は空を見上げた。
「なんつってる間に雨が本降りに」
「急ぐぞ佐助!」
「当事者置いてどこ行く気だ」
佐助の言葉に慌てて幸村は政宗を素通りして自転車のハンドルを握った。荷台に跨がりながら佐助が首を傾げる。
「あれ?俺後ろでいいの?」
「だから家知ってんのか?」
「わ゜ー」
「やっぱりー」
「何やってんだ!?」
自転車に乗ったまま倒れた二人に政宗が突っ込むと佐助がぶつけた膝を庇いながら言う。
「旦那自転車乗れないじゃん!」
「忘れてた!」
「うっかりさん☆」
「あはははは」
「ははははは」
ヤバイ深夜で変なテンションになってやがると思った政宗は一人自転車に跨がって二人を置いて帰ろうと思った。
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突然の雨に濡れ、彼の家に寄ることに