彼が彼女で、以下略 「出〜た〜〜!!!」
ウソップが絶叫すると、ゾロが刀を構え、サンジは手すりに座って煙草を噛み、全員を従える様にルフィが先頭に立った。
ルフィの振りかぶって伸ばした腕は、船の進路を遮る様に現れた海王類の顔に当たった。
殴られた海王類は体を大きく仰け反ると、くしゃみをして元に戻った。ルフィは腕が戻った反動できゃあと言いながらコロンと転がる。
「何やってんだおまえは!!?」
全員が愕然と船長を見るが、ルフィは反論もせず物憂げにため息を吐いただけだった。
転がった時に飛ばされた麦わら帽子を自分の頭に乗せて、ロビンが笑いながらルフィに手を差し出す。
「しししし、だめだなーロビン」
ロビンと呼ばれたルフィは差し出された手を取り、立ち上がって肩を竦めた。
「伸ばせばいいというものでもないのね…」
「…はぁ?」
二人のやりとりにその場にいた全員が首を傾げた。
つられた海王類も頭を傾けていた。
「ルフィがロビンの体で、ロビンがルフィの体なの?」
デッキチェアに横になりながらナミは新聞を広げて、側にあるいつもと雰囲気の変わった男の顔を見る。
ナミとルフィの間のテーブルにきれいに盛り付けたおやつを置きながらサンジは珍しく麦わら帽子の乗ってない頭を眺めた。
「原因は何なんだい?」
「変なものでも食ったか」
「どういう意味だ長っ鼻」
ウソップが考えるように指で鼻を捻りながら問うとサンジが睨んでウソップの前からおやつを取り上げる。
「目が覚めたらこうなっていたの」
ウソップが謝りながらサンジに縋る姿を笑いながら、ルフィはテーブルについた腕を組んで答えた。
「これじゃ誰が船長だかわかんないじゃない」
新聞を畳みながらナミは眉根を寄せる。ルフィは肩を竦めて苦笑した。
「ごめんなさい」
「んまそーだな〜」
ルフィの頭の上から、麦わら帽子を被ったロビンが物欲しそうに呟くと、ルフィはフフと笑って一口摘んで自分用のおやつの残りを全てロビンに譲った。
「そういえば……昨夜はひどく頭を打ったわね」
ルフィが、貰ったおやつを貪るロビンの前髪をめくってコブを見せると、もぐもぐと口を動かしながらロビンが言う。
「んん。船が揺れたんだよ。そんでロビンと頭ぶつけたんだ」
ふーん、と話を聞いていた三人は当時の状況を思い出すように宙を見つめる。
傍で話を聞いていたチョッパーはロビンの額を手当てしようとロビンの腕を引いて座るよう促していた。
「…ちょっと待って、それって夜遅かったじゃない?」
なんで二人でいたの、と独り言のように呟いたナミにルフィは頬に手を当てて微笑む。
「あら。ウフフ」
なんでどうしてとルフィを質問責めにするナミとサンジの声に昼寝から起こされたゾロは、何の騒ぎかと寝惚け眼で周りを見た。
「ゴムなのになー?」
「…二人で頭突きしたのか?」
自分のすぐ隣で床に直に座るロビンとその額に湿布を貼るチョッパーを見ながらゾロは、何故チョッパーは自分の腹の上に居るんだろうとぼんやり考えていた。
次の日、額を腫らしたルフィの頭に麦わら帽子が乗っているのを見た船員たちは元に戻ったならまあいいかとその現象について考えることを忘れた。