【ふたりへのお題ったー】
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【 蓮キョへのお題 】
・安心してねむれるかい
・(どうかわらっていてください)
・離したくないって言ったら、怒る?



(無理無理無理。やっぱり無理!)

「どうかした?」
「ひやゎぁあッ!」

坩堝に嵌まっていたキョーコは家主の帰宅に気づかず、突然かけられた声に肩を波立たせた。
慌てて、おかえりなさいと答えて膝を揃える。ただいまと微笑む蓮に後ろめたさで目が合わせられない。

「最上さん……先に休んでていいって言ったのに」
「え!? えっと…こ、怖い夢を見たもので!その……すみません……」
「ああ、それなら電気点ければいいのに。それとも何か飲む?」

暗闇の雰囲気と、深夜という時間帯に蓮は声量を抑えてキョーコの側に膝をついたが、キョーコは首を振って後退さった。その際に、失敗した、と呟きが漏れたがその事に本人は気づいていない。

「いいえ!結構ですから!すぐお暇しますからっ!」
「お暇って……帰るの?」
「あっ、いえ、部屋に下がりますっ!それは約束しましたから!」
「よかった。……んー……じゃぁ……」

安堵の息を吐く蓮に、キョーコは床に両手をついたまま項垂れる。
折角オフの日が重なったのだから一日一緒にいないかと蓮に誘われて、明日は朝から一緒に御飯を食べて、いわゆるお家デートというものをする予定だった。

(一応、そおゆう関係になってからの初めてのお泊まりだし。やっぱりそういう事じゃないかしら…。泊まってく?って言われる度に帰ります!と即答してきたけどこのままじゃいつまで経ってもお子様扱いから脱却出来ないわ。いっそ今夜、一線を画する為に、その為にッ、…たすけてモー子さん!)

心の底からの雄叫びに、知った事じゃないわよ!と幻聴が聞こえた気がしたが。『怖くて一人じゃ眠れないの…作戦』に失敗したキョーコは次の手を考えてみるが、振り撒く色気も持ち合わせがないと思うと他に何をどうしたらいいのかさっぱりわからない。

「…る?最上さん」
「え?何ですか?」

名前を呼ばれて顔を上げるとそこには夜の帝王がいました。
キョーコが思わず脳内で作文している間に、蓮は曲げた膝に肘をついて、片手で支えた頬に悠然と微笑みを浮かべていた。

「だから……一緒に寝る?」
「いやややややっぱりまだ早い気がっていえあの」
「危ないっ」

思わず床を這って逃げ出そうとしたキョーコの前に腕が伸びて額を抑えられる。テーブルにぶつかる寸前で止められたと気づいたキョーコは息を飲んで固まった。

「ごっごめんなさい!」
「いや、俺の方こそごめん。…一人で、安心してねむれるかい?」
「……はい……」

押さえたキョーコの頭を力任せに引き寄せて、蓮はからかい過ぎたと溜め息を吐く。
頭を抱えられた事で、キョーコは無自覚に敦賀テラピーにより落ち着きを取り戻し、恐々と大きな背中に腕を伸ばし深呼吸すると、帝王に勝負を挑む無謀さを悟った。
計画自体を諦めて冷静になって考えると、怖い夢を見たなんて幼稚な事を言った自分が恥ずかしくなってくる。

「あの、もう……だいじょうぶ、ですから……」
「……うん……」

破廉恥な娘って思われるくらいなら子供みたいだって嘲笑われた方がマシだわ。速攻で土下座してゲストルームに逃げよう、思ってキョーコは蓮の腕から逃れようと身動いた。

(どうかわらっていてください)

心底そう祈りながら平静を装っていたキョーコの背中に触れた蓮の手は外れなかった。ふぅ、と熱を帯びたような溜め息がキョーコの耳に当たって背筋が凍る。

「…離したくないって言ったら、怒る?」
「────ッッ!!!!」

ぶわっ、と全身から何かが逆立って迸る。
キョーコは我武者羅に、目の前の体躯をどーん!と両手で突き飛ばした後、転がるように部屋に駆け込んで壊れんばかりに扉を閉めるが即座に扉を開けて涙声でおやすみなさい!と声を張ってから再び扉を閉める。今度は鍵まで閉めた。
一連の行動の間、突き飛ばされたまま床に伏していた蓮は、小刻みに震えて笑い声を耐えていた。

「……『まだ』、ね……」


呟いた声は暗闇に紛れて、本人の耳にすら届かない。

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焦る最上さんにニヤニヤする敦賀さんの話。




2016/04/17 comment ( 0 )







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