【無理矢理キスしてみたー】
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ディスガイア4R(ヴァルアル)
⇒天使が暴君を押し倒して唇を奪うと無感動な醒めた表情でじっと見つめられました。


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物音がした気がして、開かない瞼を無理矢理に開ける。朦朧とした視界の中で閉めた筈の窓が開け放たれカーテンがたなびいていた。
ベッドに沈んでいたいと抗う半身を無理矢理起こして瞼を擦っていると、ひやりとした空気が首筋に流れて思わず首をすくめ、背後を振り返る。
闇の中浮かび上がる二つの赤い光が瞬いて、ひとの形をした誰かの瞳だと知れた。
暗闇の中から伸びてきた腕は異様に白く、首に回された指は上等の絹の滑らかさを持つけれど屍体のように冷たい。

「ヴァルバトーゼさん……?」

名を呼ぶと指は一瞬身じろいだように跳ねたが、再びゆっくりと首に伸ばされ脈を探るように蠢く。
再会を果たしてからの吸血鬼は偶に、脈を確かめたり体温を感じたり、生きている証を探るような仕種をするから、今も敢えて妨げはしなかった。

「窓……閉めて下さいって、言いましたのに……」

宵闇に語られる者として窓からの侵入は礼儀だと胸を張る青年に、誰が開きっぱなしの窓を閉めると思いますのと責めたのはまだ記憶に新しい。
無意識に閉じようとする瞼と戦っている間に、窓が閉じられた音が耳に届いて、じゃあ無理に起きなくてもいいかしらと睡魔に抗うのをやめた。
鉛のように重く感じる腕を上げ、傍にいる筈のひとを探す。支えるように触れてきた手を引いてベッドに再び沈むと待ちわびた弾力に全身から力が抜けた。
柔らかい何かが唇を掠めたが、すぐ側で息を飲んだような硬い気配がして、悪戯が成功したような笑いが込み上げてくる。

「今夜は、しませんからね……」

昼間、今日はきっと徹夜になると彼が言ったのだ──だから待たなくて良いと暗に言い含めるように。
別に期待していた訳ではないけれど、否、期待は少なからずしていたし気分も落ち込んだりしたけれど、それは二人きりになれる機会が消えた事に対してであって、そんな、男女のアレやコレを想像したりなどしていない。ええ、決して、そんなことは考えたりしていません。
だから、女性の寝室に無断で侵入するような不埒者には、触れられても耐えるだけ、触れる事は許さないくらいの罰はあって然るべきなのだ。
いつからか、こんな態度をとってもきっと彼は怒らないと知っているから、彼の優しさに甘える事を覚えた。悪魔に優しいなんて言ったら、また怒られるかも知れない。惜しむらくは胸に耳を当てても心音が聞こえないことだろうか。
うつらうつらと伸ばしていた腕を引き戻しているとするりと指に髪が絡む感触がした。反射のようにくるりと指に遊んでしまう。
吸血鬼さんの髪が指に絡まるなんて、こんなに長かったかしら、ああでも昔は髪も長くて、上背もあって暴君の名に相応しい姿をしていらして、正に今その姿を目の当たりに──

「え」

かち。と音がしそうな程、紅い瞳と目が合った。それは部屋に置かれた時計の音だったのかもしれないが、眠気を飛ばすには充分の衝撃をもたらした。

「えっ?」

血を吸って昔の姿に戻ったのならば喜ばしい事だけれども、約束を大事にするひとが自分以外の血を飲むだろうか。
心臓が激しく脈打ち、頬が尋常ではない熱をもち始めた。もう現実を理解しているが思考が追いつかない。
先日、過去からの来訪者を受け入れた党は騒然とした。生ける伝説と化した、魔界最強と謳われていた吸血鬼が当時の姿そのままで地獄に現れたから。自分も、仲間たちに囲まれている彼を懐かしさと申し訳ない気持ちで眺めたのを覚えている。その彼が。
自分の体の下から無感動な醒めた表情でじっと見つめていた。

「きゃぁああああああっ!?」




夜食を探しに調理場を訪れていたヴァルバトーゼは悲鳴を聞いて、イワシを片手に廊下に飛び出した。暗路を足音高く駆け抜けてきた天使の姿に手を差しのべて呼び止める。

「アルティナ!? 何事だ……ぶッ!?」

吸血鬼の腕のなかに飛び込んだ天使は間髪を容れずその青白い頬に平手打ちを喰らわせると潤んだ目で睨め上げて震える声で詰った。

「あなたがそんな方だったなんて!見損ないましたわ吸血鬼さんッ!!」
「はァッ!?」


勘違いだった己の所業に赤面が止まらないまま八つ当たりする天使と、状況が全く理解出来ないまま打たれた上に天使に密着されて異様に狼狽える吸血鬼は、駆けつけた人狼の執事が止めに入るまで二人でじたばた騒いでいた。

そして暴君は、彼の下僕がその存在に気づくまで沈黙を守って佇みながら、未来の己の醜態を無感動な醒めた表情でじっと見つめていた。



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] 暴君 → ○ 閣下

そもそも変換する字を間違えた、という話。




2016/04/17 comment ( 0 )







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