3. おはよう、がんばって「…おはよう」
ドアの隙間からリンが、あからさまに寝不足な顔を半分だけ出して言った。
何してんだと訊く前に、朝御飯あるよとカイトが返す。途端にリンは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「何でいるの…。いつももっと遅いのに」
「一限目あるからね」
それでも二人よりは遅く出るよと、カイトはオレンジジュースを注いでテーブルに置く。リンは黙ってジュースの前に座って、カイトが朝飯を並べるといただきますと呟いてもそもそ食べ始めた。
食わないという選択肢はないらしい。オレならケンカ中の相手の悉くを無視すると思うけど。まぁオレには関係無いし。
「行ってきまーす」
「あっ、待ってあたしもっ。行ってきます!」
リンが慌てて朝食の残りを口に押し込み鞄を掴んで走ってきた。…歯ァ磨いたか?
玄関先で、靴を履くリンを待っているとカイトが見送りに出てきた。逃げるように玄関から飛び出したリンにも聞こえるように、でも顔はオレの方を見ながら、カイトが言う。
「行ってらっしゃい。テストがんばって」
「え? ………………!!!」
バタン、とリンの顔の前で玄関が閉められる。
わかってる。寝不足なのはカイトとケンカしたのを気にしてたせいってのも、今の今まで今日が試験なのを忘れてたってことも。
でも、そんな顔で俺を睨んだってどーしようもないだろ…。
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歯は?