嘘吐き同士は浅い浅いキスをする「…帰らなくていいのか?」
佐助の髪を掴んで、息のかかる距離で政宗が問う。
「帰って欲しいの?」
笑い含みに佐助に返されて、政宗は掴んだ手に力を込めて佐助の頭を引き寄せた。
「本気で帰りたいって言うなら帰してやるよ」
「それは、帰したくないって言えたらね」
一瞬沈黙した政宗は、口元で笑って掴んだ髪から手を離した。それでも顔を逸らさない佐助に、重ねるだけの口づけをして呟く。
「言えないな」
「言えないね」
困った様に笑って佐助はゆっくりと身を起こしたが、座ったままで帰ろうとしない。怪訝に思って政宗は声をかけようとしたが別の声に遮られた。
「政宗様、よろしいですか」
小十郎に呼ばれて、短く息を吐いて、佐助の膝から上半身を起こした。何事かと問いながら怠そうに立ち上がって頭を掻きながらも小十郎の待つ隣の室へと移る。目を離した隙に居なくなっているだろうと思いながら、暫くしてから確認に政宗が部屋に戻ると、佐助は床を眺めながら座ったままだった。
「……何してんだアンタ」
「何が?」
立ち尽くす政宗に顔だけ振り返り、膝を曲げて座ったままにっこり笑う。傍まで近づいても、足を引き寄せるだけで動こうとしない。
「…………」
なんとなく政宗は佐助の足を軽く踏んでみた。
「やっめ、ろにゃ!」
「にゃ!?」
「うるさい!」
蹲り、手で足に触れているのかいないのかおかしな動きをしながら佐助は呻く。
「頭でっかちめが……」
「悪いねェ、誰かと違って中身が詰まってんだよ」
「ほんとだよ。今まで一度もならなかったのに」
今まで、にカチンときた政宗は静かに震える息を吐いていた佐助の傍にしゃがみ、その両足を鷲掴んで触り倒した。
「う"っにゃ、ぁッ」
慣れない刺激に喚いていた佐助の語尾が、にゃから馬鹿に変わってきた頃に政宗は佐助の足を放り捨て、立ち上がって何故か居丈高に言い捨てた。
「迷わず帰れよkitty」
苛立たしげな足取りで部屋を去っていく政宗の後ろ姿を睨みながら、佐助は屈辱に震えて呟いた。
「三度目は無いからな……!」
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猫の日に間に合わなかったもののようです。