「愛が欲しいなら、あげようか?」

男は握っていた眼帯を指で抓み上げ、数度裏返して見回した。

「……何が、何だって」

何を言ったのか理解出来ず、問い返した己の声は抑揚を抑え過ぎて逆におかしかった。
男は眼帯を付けて、髪と同じ薄い色の目で見上げてくる。

「違うの?これも、あいって言うんだろ?」

瞬きをして、眼帯の上から親指で指し示した。歯を剥き出して威嚇の様に笑う。

「HA!それともオレの方が欲しいか、アンタは?」

人の声音を真似して、下らない事を言う。
猿真似がムカついて眼帯の上から殴ると片手で押さえて低い声で短く呻いた。

「馬鹿言ってないで返せ」
「……とってきてあげようか」

頭の後ろの結び目を解いて引くと、紐だけが抜けた。後ろ頭を小突くと横向きに臥せて、鍔を載せた掌を見せる。

「あんたの母親の子供から、とってきて埋め込んだらさ」

見上げてくる目の下の晒された首を見ると斑に染まっていた。痛まない訳ではないだろうにその事には触れない。

「逆になると思う?」

今更どうにかした所で浅ましいと言われるだけだろう。何をしても痕は無くなりはしないのならば触れない事が最善なのだと。

「思わねェ」
「ね?」

だからさ、と手の中の鍔を目もくれず畳の上に捨てて。

「どっちが先とか関係無いだろ?」

劣っているだとか奇異や異端は意味がない。 違うということが全てだから。
眩しくて目障りだったから古い右目と一緒に遠い日に置き捨ててきた、


あれが愛と云うんだって、



(きっとお前は一生気付かないし)(捨てたのも捨てられたのも自分だけじゃない)


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めご と読む勇気はなかった。


2014/10/31 ( 0 )







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