台本通りに愛したよ 子供の頃、森の中でまだ幼かった主人と出会った。
互いに惹かれ合ったそれは、恋慕や友情ではなかったと今では解る。自分に足りないものを補い合っただけで。己に足りないものを持っているから互いが素晴らしく見えた。互いに持てないものしか、持っていなかったのに。
出会って直ぐの別れの挨拶は再会の約束で、未来を信じるなんて出来なかったけど胸の奥に何かが灯ったのも確かだった。己には必要の無いものだと自覚もあったがこの熱を信じていれば大丈夫だと思った。そんな想いは自分だけだったと知った時、恥ずかしさで死ねると思った。なんて狭い世界に生きていたんだろうと絶望した。ならばと拡がる世界に踏み出すのは二の足を踏んだ。
知ったら、帰って来れない気がした。自分は本当に知りたいのかと思った。世界を開いて矮小な己と比較してそれが何になるんだろう。知ってしまえばもう赤く染まる夕焼け空を見ても綺麗だと思わなくなるだろうか。思っていた自分は何処にいくのだろうか。
自分は何所にいくのだろう。其所には彼がいないだろう。そんな場所にいたいだろうか。
結局自分は彼が基準で彼が中心で彼が凡てで其の事を不満に思った事すらあっただろうか。
認めてしまえば単純だった。所詮自分は、庇護すべき彼より己の方が幼かった事が恥ずかしいだけで。勝てないのなら諦めてしまえば楽だった。
守らなければは守りたいで、薄給は信用で、帰りたいは会いたいなのだ。きっと出会った時に決まってしまった事。偶然は運命だと云う人もいるし。敢えて逆らう意気地もないし。
偶然出会って、運命的に再会して、離れられない定めなら。いっそ皆まで流されて
「愛しちゃうしかないでしょ」
「…………面白くもねェ話だな」
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戦国 佐→幸
佐助は器用貧乏。
理屈ばかりこねまわして すっかり冷めた胸の奥が ただ一度の微笑みで こんなに見事に燃えるとは(BUMP)と云う設定
旦那と忍の過去(捏造設定)を知りたいなら、
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