【ふたりへのお題ったー】
http://shindanmaker.com/122300【 蓮キョへのお題 】
・安心してねむれるかい
・(どうかわらっていてください)
・離したくないって言ったら、怒る?(無理無理無理。やっぱり無理!)
「どうかした?」
「ひやゎぁあッ!」
坩堝に嵌まっていたキョーコは家主の帰宅に気づかず、突然かけられた声に肩を波立たせた。
慌てて、おかえりなさいと答えて膝を揃える。ただいまと微笑む蓮に後ろめたさで目が合わせられない。
「最上さん……先に休んでていいって言ったのに」
「え!? えっと…こ、怖い夢を見たもので!その……すみません……」
「ああ、それなら電気点ければいいのに。それとも何か飲む?」
暗闇の雰囲気と、深夜という時間帯に蓮は声量を抑えてキョーコの側に膝をついたが、キョーコは首を振って後退さった。その際に、失敗した、と呟きが漏れたがその事に本人は気づいていない。
「いいえ!結構ですから!すぐお暇しますからっ!」
「お暇って……帰るの?」
「あっ、いえ、部屋に下がりますっ!それは約束しましたから!」
「よかった。……んー……じゃぁ……」
安堵の息を吐く蓮に、キョーコは床に両手をついたまま項垂れる。
折角オフの日が重なったのだから一日一緒にいないかと蓮に誘われて、明日は朝から一緒に御飯を食べて、いわゆるお家デートというものをする予定だった。
(一応、そおゆう関係になってからの初めてのお泊まりだし。やっぱりそういう事じゃないかしら…。泊まってく?って言われる度に帰ります!と即答してきたけどこのままじゃいつまで経ってもお子様扱いから脱却出来ないわ。いっそ今夜、一線を画する為に、その為にッ、…たすけてモー子さん!)
心の底からの雄叫びに、知った事じゃないわよ!と幻聴が聞こえた気がしたが。『怖くて一人じゃ眠れないの…作戦』に失敗したキョーコは次の手を考えてみるが、振り撒く色気も持ち合わせがないと思うと他に何をどうしたらいいのかさっぱりわからない。
「…る?最上さん」
「え?何ですか?」
名前を呼ばれて顔を上げるとそこには夜の帝王がいました。
キョーコが思わず脳内で作文している間に、蓮は曲げた膝に肘をついて、片手で支えた頬に悠然と微笑みを浮かべていた。
「だから……一緒に寝る?」
「いやややややっぱりまだ早い気がっていえあの」
「危ないっ」
思わず床を這って逃げ出そうとしたキョーコの前に腕が伸びて額を抑えられる。テーブルにぶつかる寸前で止められたと気づいたキョーコは息を飲んで固まった。
「ごっごめんなさい!」
「いや、俺の方こそごめん。…一人で、安心してねむれるかい?」
「……はい……」
押さえたキョーコの頭を力任せに引き寄せて、蓮はからかい過ぎたと溜め息を吐く。
頭を抱えられた事で、キョーコは無自覚に敦賀テラピーにより落ち着きを取り戻し、恐々と大きな背中に腕を伸ばし深呼吸すると、帝王に勝負を挑む無謀さを悟った。
計画自体を諦めて冷静になって考えると、怖い夢を見たなんて幼稚な事を言った自分が恥ずかしくなってくる。
「あの、もう……だいじょうぶ、ですから……」
「……うん……」
破廉恥な娘って思われるくらいなら子供みたいだって嘲笑われた方がマシだわ。速攻で土下座してゲストルームに逃げよう、思ってキョーコは蓮の腕から逃れようと身動いた。
(どうかわらっていてください)
心底そう祈りながら平静を装っていたキョーコの背中に触れた蓮の手は外れなかった。ふぅ、と熱を帯びたような溜め息がキョーコの耳に当たって背筋が凍る。
「…離したくないって言ったら、怒る?」
「────ッッ!!!!」
ぶわっ、と全身から何かが逆立って迸る。
キョーコは我武者羅に、目の前の体躯をどーん!と両手で突き飛ばした後、転がるように部屋に駆け込んで壊れんばかりに扉を閉めるが即座に扉を開けて涙声でおやすみなさい!と声を張ってから再び扉を閉める。今度は鍵まで閉めた。
一連の行動の間、突き飛ばされたまま床に伏していた蓮は、小刻みに震えて笑い声を耐えていた。
「……『まだ』、ね……」
呟いた声は暗闇に紛れて、本人の耳にすら届かない。
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焦る最上さんにニヤニヤする敦賀さんの話。
【ふたりへのお題ったー】
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【 ゾロナミへのお題 】
・わらって、わらって、泣いて、
・「ばーか。そろそろ気付け!」
・はじめから飛べるわけもなく魔法使いが死んだ。
深緑の魔術師と呼ばれた男は、魔法使いの杖を持たず代わりに三振りの刀剣を携えていた。
元は人間の剣士だったのだという。
しかしその魔力は絶大で、住み処の森に隠遁しながらも衆人からは畏怖と尊敬を集めていた。
けれど森から出て来ないのは迷子になって外まで辿り着けないだけの事だとか、強面の下に悪童の笑顔が隠れている事を、私だけが知っていた。
悪人からしか盗まない信条の私は盗んだ財を一人占めする泥棒猫と蔑まれ、追い込まれた森で魔法使いに使い魔として拾われた。
魔女の体が死ぬ時、その魔力は近くにいる人間に移り、その人間は魔女になるらしい。魔法使いも同じ方法で親友の魔女から魔力を引き継いだのだと、箒に乗る練習をさせられながら聞いていた。
魔法使いが死んでから、箍が外れたように森の獣が増えた。森の外では人間が襲われる被害も少なくないらしいが、魔法の使い方も解らない私はとりあえず暇があれば箒に跨がった。
その日も箒に跨がって跳ねていた。突然、見覚えのある顔の群衆たちが現れて、森の魔法使いを殺した泥棒猫を討伐に来たと言い出した。私が魔法使いの力を盗んで死に追いやり、森の獣を操って人間を襲わせているに違いないと、村人たちで結論したらしい。
武器を持つ村人たちに、誰が猫だとわらって、わらって、泣いて、力が抜けた。
猫なら使い魔に相応しいと、わらった男はもういない。死ぬ時は魔力を譲って頂戴ねと、わらって言った私は。
今さら泣いて詫びても遅いなどと訳の解らない事を喚いた村人が、悲鳴を上げた。
いつの間にか、私を囲む男たちを、取り囲むように狼の群れがいた。脱兎の如く逃げ出した村人を狼が追いかける。
脱力して立ち上がれない私の前に、先程の狼の倍はあるかという大きさの狼が立ちはだかった。
このまま喰われてしまうのか、抗う気力もない私の顔を覗き込んだ巨狼の口がわらうように歪んだ。
「ばーか。そろそろ気付け!」
その声は聞き慣れた男の物だった。
魔法使いでもなかった私が箒に跨がったところではじめから飛べるわけもなく、魔女になった時には方法を知らず。
魔力以外何ひとつ残さなかった魔法使いのせいで。
何ひとつ説明もしなかった男のせいで。
箒は一度として掃除用具としての用途を果たせず巨狼の頭に叩きつけられ二つに折れた。
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魔女と魔獣で続きますみません。
【ふたりへのお題ったー】
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【 カイアンへのお題 】
・誓って、誓いあって
・「きらい、だった。」
・ふたりだから、終わらないよ
(Cエンディング)「我らの契約はここに終了する」
其れが赤き竜なりの死刑宣告だったらしい。
詫びの言葉など初めて聞いたが、それも竜なりの冥土の土産というやつかも知れない。
誓って、誓いあって。血や肉の繋がりより深く強く己の内を侵食せしめていた煩わしさから、漸く解放された筈なのに。
「きらい、だった。」
吐き出した言葉は赤竜の猛火に霧散した。
もう伝わらないのか、何もかも。ならば何故、竜の次の動作が読めてしまうのか。その感情の機微すら、恐らく寸分も違わず。
赤竜は遠慮会釈なく攻撃の手を緩めず、此方とてそれは同様。
──相手の心に添う。
まだ父母が健在だった頃。
妹にせがまれて舞踏の練習に付き合わされた時、教師が言っていた台詞を。何故、今、思い出すのか。
浮かんだ笑みは、肉を断つ愉悦とは違うものだった。
(ふたりだから、終わらないよ)
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こんなの終わらせられねぇよ…!と思っていた、当時。