十二国【ふたりへのお題ったー】マギ
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【 シンジュへのお題 】

・てのひらに飴玉
・「泣き顔がすきだな」
・かみさまのいうとおり



「探したぞジュダル」
「頼んでねぇよ」

シンドバッドの声に即座に否定を返してしまう。視線だけで振り向けばシンドバッドの傍らには顰めっ面の女仙が控えていた。
ジュダルが舌打ちをすれば女の顔は更に不快に固まり、ジュダルの不愉快さは増す。

「何の用だよ」
「特に用も無いが」

暢気な顔のシンドバッドに苛ついて近くに生えていた花を蹴散らした。女仙は聞こえよがしに溜め息を吐く。
物心つく前に拐われたジュダルには蓬山の記憶はない。誘拐時に巻き込まれて死んだ女仙は運が悪かったがジュダルの所為では無い筈だ。
王を選んだから慣例に従ってわざわざ足を運んでやったというのに、女仙は麒麟の帰山を歓迎はしたが、黒く染まった麒麟に困惑し扱いあぐねていた。
忌避される事には慣れているジュダルにはどうという事もなかった。女仙の態度だけなら。
問題は王の方だった。

「シンドバッド様、そろそろ丹桂宮にお戻りになられませんと……」

声をかけるのに、その男の腕に絡まる必要がどこにあるというのか。女仙の猫撫で声も気に入らない。
ジュダルは煙たがられているのにシンドバッドばかりが女仙に持て囃されるのは腑に落ちない。あいつなんて俺が選ばなかったら、ただのちょっと目立つ覇気の強いだけのおっさんの癖に。

「ほら」
「…何だよ」
「桃は無いんだと」

無視している事に気づいていないのか無神経なだけか、シンドバッドは無理やりジュダルのてのひらに飴玉をのせる。

「お前は女どもに囲まれてる方が楽しいんだろ」
「まぁな。でもお前も、泣き顔がすきだな」
「…何言ってんだ……」
「うん。だから、気にするなって事だ」

戻るぞ、と頭をぐしゃぐしゃに撫でて、シンドバッドはジュダルを置いたまま踵を返した。
探しに来たんじゃねぇのかよと愚痴りながらジュダルはその背中に従ってしまう。飴玉も、投げ棄ててやろうと握って、結局口に放り込んで噛み砕いた。
俺が選んでやった、俺の王様、の筈なのに。この感情すらかみさまのいうとおりだとしたら、俺は道化でしかないのか。

「…バカみてぇ」
「なんだいきなり。失礼な」
「違ぇよ。うるせぇバカ殿。肉をよこせ」
「馬鹿者」

そんな事言うから疑われるんだとシンドバッドは呆れたように隣に立ったジュダルの頭を小突いた。


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歓迎の宴で「野菜ばっかかよ!肉は!?」と言ったに違いない黒麒麟サマ。
時間経過としては偽王(銀行屋)を倒した直後。
結果、拍手お礼にしなかったもの。



2016/01/05 comment ( 0 )






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