欲しいのはあなただけ2* 「……………やっぱり無理……」 数分でぱた、と動きを止めて、私はずうぅんと落ち込んだ。慣れないことはするものじゃないと、改めて気付かされた。 結論から言えば、全然出来なかった。 難しかった。 せっかく速水くんが手伝ってくれたのに、彼の動きとタイミングが全く合わなくて、なんとも拙い動きになってしまった。速水くんが動かなければ私は上手に動けなくて、何でも出来る気がしてたけど、本当に"気"だけだった。 結果、全然気持ちよくしてあげられなかった事実に、胸が痛む。 なのに、速水くんときたら。 「……くっ、ふ、ははっ。無理だね(笑)。天使さん面白すぎ」 「笑わないで……」 笑われ過ぎて、ムカムカしてきた。 悔しくて、彼の鼻をぎゅうっと摘まむ。完全な八つ当たり。 「あ、痛い。鼻摘まむのやめて。暴力反対」 「わたし頑張ったのに」 「ごめんごめん。うん、すごく、すごく頑張ってたね。でもあの動きは、さすがにない……ふ、(笑)」 私のあまりにも下手すぎる動きは、逆に速水くんのツボに入ったらしい。散々笑われた挙げ句、「1ヶ月くらいこのネタで笑えそう」なんて言われる始末。いくら何でも酷いと思う。 「……天使さん、もうギブアップみたいだし。俺の方から動いてもいい?」 私の大失態で一時休戦となった行為だけど、ナカに埋まっている彼のものは、いまだ硬度を保ったまま。私の濡れ具合は少し引いたけど、潤いはまだ十分に満たされていて、今すぐ動いても問題がなさそうに思えた。 何より、身体の熱を持て余したまま中断なんて、お互いに出来っこない。だから、続きをしたいとの申し出に小さく頷いた。 「……えと、よろしくお願いします」 「はいはい、了解」 交代を願い出る私と、相変わらず笑いを押し殺してる速水くん。性行為の最中とは思えない、なんとも緩いやり取り。 私のせいで、せっかくの雰囲気壊しちゃったな……と反省した直後。 信じられないことが起きた。 「きゃッ!?」 速水くんの両手が私の腰をがっしり掴み、勢いよく、ずんっと下から突き上げてきた。 目の前に星が散って、悲鳴が漏れる。 「えっ? なに、」 「動くよ、天使さん」 それだけを言い残し、速水くんは腰を思いきり動かし始めた。 仰向けの状態で、有無を言わさず上下に揺する。最奥までみっちり埋められて、その深さに息が詰まる。 「んぁ……ッ、速水くん、ふかい……っ、あっ! ぁん、あっ、やぁ、んッ」 ギシギシとベッドが揺れる。理性のタガが外れ、突き動かされる激しい動きに身体が大きく仰け反った。 強烈な快感が一斉に襲い掛かってきて、気持ちよくてたまらない。奥から蜜が怒濤に溢れ、あっという間に秘所を濡らす。そのお陰で、律動はますます激しさを増した。 下から容赦なく、ずんずんと突き上げられる。 彼と繋がっている場所から、ぐちゅぐちゅと卑猥な音がひっきりなしに漏れる。 内股を伝う蜜がぽたぽた零れ、シーツに新たな染みを作った。 「あっ、やだぁっ、あぁ、」 「……いい眺め。天使さん、やっぱり身体のライン綺麗だね。ずっと見ていられる」 「は、ずかしい……ッ、あっ、あ」 乱暴なまでに身体を揺さぶられ、ふるふると震える乳房を彼の両手がやんわり掴んだ。刺激欲しさに疼く先端を、きゅっと摘まんでくる。 「やん……ッ!」 「……はっ、ナカ、締まって……きっつ……」 甘い刺激がぴりっと走り、ナカにある彼のものをぎゅっと締め付けてしまう。その度に彼の口から、苦しげな吐息が漏れた。 それでも速水くんの律動は止まらない。 もう一度私の腰を掴んで、一層激しく突き上げる。一気に込み上げてくる絶頂感を、振り切ることも出来そうにない。 「やぁ、はげし、いの、待って……ッ!」 「激しいこと好きでしょ? 欲しいならいくらでもあげるから、もっと俺に堕ちて。心もカラダも、俺なしじゃ生きられなくなってよ」 「んっ、だめイくっ、イくの……ッ……ん、あぁ──……ッ!」 直後、身体の奥で熱が弾けた。 ビクンッと腰が震えて、痙攣が止まらない。彼の身体の上で、釣り上げられた魚のようにビクビクと身体を震わせる。 次第に熱が引いて、落ち着いた頃を見計らって、速水くんは私の手を引いて胸へと誘《いざな》う。 仰向けのままぎゅうっと抱き締められて、心地いい安堵感に浸っていた、ら。 「……ひゃッ!?」 速水くんは私を腕に閉じ込めたまま、身体をくるんと反転させた。 今度は私が彼の下になり、そこで、いまだに私から抜かれていない彼自身の存在を思い出す。 再びゆるゆると揺さぶられて、薄れかけていた欲をあっさり呼び起こされた。 「あっ、ちょ、速水くん……?」 「なんでもう終わったような顔してるの? 俺まだイッてないんだけど。まさか自分だけイッたら終わりとか言わないよね?」 「あっ、待って、まだイッたばかり、」 「ちゃんと休ませてあげたじゃん。だから今度は俺に付き合って。大丈夫、すぐにはイかないから」 平然とした顔で言うけど、僅か10秒程度の合間を『ちゃんと休ませた』で済ませていいんだろうか。 そんな冷静な分析も、彼が本格的に抽送を開始した瞬間に消え去った。 「あっ、ん! あっ、あ、ダメッ、やぁっ」 両脚を彼の肩に抱えられ、ぱんぱんと奥を打ち付けられる。騎乗位の時と比べて勢いがないのは、彼が加減しているから。 なのに、イッたばかりで敏感になっている私の身体は、その緩い突きでも簡単に上り詰めていく。新たに生産された蜜が、じゅぶじゅぶと淫らな音を発した。 「天使さん……もうイキたいんでしょ? ナカがうねって凄いことになってる」 「はや、みくん、あッ、動いたらだめ、イッちゃうの……っ」 「可愛いね……可愛すぎて、滅茶苦茶にしたくなる」 「やっ、止まって、お願い……ッ」 「だめ。俺がイくまで止めない。でも天使さんはイキまくってていいからね。遠慮しなくていいから。……ほら、イきなよ」 「───っ!」 その、素っ気ない一言で熱が弾けて。 頭の中が、真っ白になった。 トップページ |