触れ合うお話。2* 「あっ……」 もう一度ベッドに転がされて、先生から降り注ぐキスの嵐を、私は全身で受け止める。唇から鎖骨へと伝う先生の唇が、やがて胸の膨らみに辿り着いた。やわやわと揉みしだかれて、もどかしい愛撫に息が上がる。 指先が一瞬だけ先端を掠めて、ぴくっと身体が跳ねた。 「んっ、」 小さく反応してしまった私に、先生はゆったりと微笑む。気恥ずかしくて顔を横に向けた時、露になった首筋に先生は顔を埋めた。 キスが落ちて、舌がつー……、と素肌を滑る。ゾクゾクとした感覚に耐えられず、もぞもぞと身を捩った。 「っ、くすぐったい……ッ」 「くすぐったい?」 「ん……」 「……じゃあ、これは?」 両胸の先を、先生の指がキュッと摘む。 「あっ……!」 ピリッとした甘い刺激が全身に駆け巡る。指の腹で擦られたり、爪先で優しく引っ掻けたり、変化をつけて触れられる度に快感が迸り、身体が小刻みに震えてしまう。刺激を与えられたお陰でぷっくり膨らんだ胸の蕾を、先生はゆっくりと口に含んだ。 「ひゃ……!」 びっくりして声が上がる。一瞬だけ動きを止めた先生は、けれどすぐに愛撫を再開した。 濡れた舌先で転がしながら、もう片方は、指と指の間でくにくにと捏ねられる。でも力加減は緩くて、舌の動きも優しいもの。 どうしよう。 これ、ものすごく、気持ちがいい。 両方から与えられる刺激に耐えかねて、枕のはじっこをぎゅっと握り締めた。 「っ、ん、やだ恥ずかし、あっ」 「可愛い。もっと声出していいんだよ」 「だして、ますっ……」 「もっと」 ちゅうっと軽く吸ったり、痛くない程度に甘噛みしてきたり。舌での愛撫は様々な動きを見せて私を翻弄させる。 じゅる、と唾液を含ませて強く吸い上げてきて、びくんと腰が弓なりに跳ねた。過剰に反応してしまう自分が恥ずかしい。 「あっ、あ、ん」 「声も可愛い」 「あっ、喋っちゃだめ、んっ」 「舐められるの好き?」 「わ、かんな、や、そんなに音たてないでぇ……っ」 ちゅうっと先端を吸い上げられて、またびくびくと体が震える。ありとあらゆる感覚が全部、麻痺してしまいそうだった。 体が熱くてつらい。 感じすぎて、自分の体じゃないみたい。 恥ずかしいのに変な声ばかり出ちゃうし、さっきからお腹の奥がウズウズしてもどかしい。 これなに……? 僅かに残された理性で考えようとしても、ぢゅるっと先端をまた強く吸われて、思考はあっさり遮断される。 「ひゃあん!」 「なに考えてるの?」 「や……も、だめ、すっちゃだめ」 「……痛かった?」 「ちが、ちがうの、あっ、だめ」 気持ちよすぎておかしくなりそうだから。 なんて、当然言えるはずがなく。 一向に止まない胸への愛撫に、意識が次第にもやんとしてくる。お腹の疼きは止まらないし、両足の間が湿っている気がして気持ち悪い。 お尻の方に、生温かい何かが垂れた気がした。 「あ、ぁ……せんせ、からだ、が」 「……香坂?」 「からだ、へん、熱くて、なんか……っ」 「………」 正常な感覚すら奪われてしまった私は、もう先生から与えられる刺激しか捉えられなくなっていた。 気持ちよくて。 気持ちよすぎて。 もうそれしか考えられなくて。 なのに先生は、突然胸の愛撫をやめてしまった。 快感の波が急に途絶え、火照ったカラダは刺激を求めようと更に疼き始める。何かを悟ったような顔つきで先生が私を見下ろしていて、なんだか居心地の悪さを感じてしまう。 ……どうしたんだろう。 「あっ」 内股に先生の手が滑り込んできて、びくりと腰が跳ねる。肌を撫でる手がスカートをめくりあげて、なかば強引に、下着の中に潜りこんできた。 驚きで一瞬、息が止まる。 「え、やっ……やだ、先生っ」 ソコはまだ誰にも触れられていない場所。 拒みたい一心で、両足をぎゅうっと強く閉じる。 けれど一足早く、先生の指がぬかるみに到達してしまった。 触れられた箇所から、くちゅ……、と湿った音が響く。 「……香坂サン」 「………」 「……濡れてますけど」 「……う……」 ………まるで自分がえっちな子だと言われたみたいで恥ずかしい。 じわり、目尻に涙が滲む。 それまで我慢していたものが、風船が割れたみたいにぱちん、と弾けた。 「……もうやだ!! うわああぁん」 「あ、キレた」 「先生のせいだもん! 先生が、先生がっ」 「うん」 「えっちなことばっかりするからだもん……っ!」 ふえぇと本格的に泣き出した私に、先生は苦笑しながらゆっくり手を引き抜いた。ごろんと隣に寝転がった彼の手に引かれて、胸元に引き寄せられる。子供をあやしつけるかのように背中をぽんぽんされて、結局私は先生を許してしまう。 「ごめんごめん。ちょっと調子に乗りすぎた」 「うぅ」 「はいはい、泣かないで。もう何もしないから」 頭をよしよしされて、目尻に浮かんだ涙を指で拭ってくれた。 欲を燻らせたまま中途半端に放置されるのも、なかなか辛いものがある。でも先生の体温を味わっているうちに、火照った体から次第に熱が引いていく。お腹の疼きも、いつの間にか消えていた。 「怖かった? ごめんね」 「こわく、ないです」 「俺のこと嫌いになった?」 ……本音を言えば少し、怖かった。 だからって、嫌いになったわけじゃない。 「嫌いじゃ、ないです」 嫌いになったりしないし、出来ない。 私にとっては陽だまりのような温かいひと。 意地悪されても、すき。 えっちなことされても、すき。 それだけは絶対に揺らがない自信がある。 「……せんせ……」 「眠くなった? 少し寝ようか」 「うん……あのね」 「ん?」 「また、続きしてね」 まだ知らない未知の領域。 男の人と触れ合う事の恐怖が、胸の中にあるのは本当。 でも、先生に触れられたいとも思ってる。 だって、えっちしてる時の先生は、とっても甘くて格好良かった。触れ方も優しくて、すごく気持ちよかった。 先生になら何されてもいいって、思っちゃったんだもん。 「いいの?」 「うん」 「今度はもっと色々するかもしれないよ?」 「……お手柔らかにおねがいします」 「そうだね」 あったかい声と温もりが、眠りを誘う。 意識が夢の底へと落ちる寸前、耳元に小さく落とされた告白だけはかろうじて耳に拾うことができた。 「好きだよ、香坂」 「ん……」 「おやすみ」 何があっても、大好き。 先生もおんなじ思いだと、いいな。 トップページ |