▼彼女の変化に彼は気付くか(先生彼氏)

「千春くんおはようございます!」
「おはよー。お、メイク変えたね」
「もう気づいたの?」
「すぐにわかります。大人っぽい感じで似合ってるよ」
「わあ、ありがとう」
「服も似合ってる。莉緒、青系統好きでしょ」
「言ったっけ?」
「言われてないけど、いつも莉緒ちゃん見てるから知ってます。そのネックレスもこの間買ったやつだよね。莉緒はセンスいいから選ぶのも上手いし、何が自分に合うかもわかってるからすごい」
「千春くんは何でも気付いて褒めてくれるの」
「気付いてあげられないとか彼氏失格ですから」
「えへ」


***


千春先生はすぐ気付く
褒め方もうまい
女心わかってるタイプ

他作品のキャラも更新するかもしれない



▼朝から楽しそう

卯月さんは朝に強い。目が覚めたらすぐにパッと起きて行動できるタイプ。逆に私は睡眠大好きっ子で、いつまでも布団の中でゴロゴロしちゃう。朝に弱い訳じゃないけど、 心地いい寝起きの感覚とか布団の温もりに、ずっと浸っていたいんだよね。これ伝わるかな??
そんな私なのに、卯月さんから叱られたり注意されたことは一度もない。むしろ私が起きるまで、何故か傍で応援してくれる。

「ねむい……おきれない……」
「お前なら起きれる。頑張れ。奈々は出来る子だろ」
「むー……」
「………」

それでも起きないと、頭をぽんぽんしたり撫でたりしてくれて、更なる心地よさを私に提供してくれる。たまにシャッター音が聞こえたりもするから、絶対写メで寝顔を撮られてると思う。私が眠りと格闘している間、卯月さんは卯月さんでこの時間を楽しんでいるみたい。

「……そろそろ起きます」
「おう」
「今なら起きれる気がする」
「頑張れ」
「……とりゃっ!!!」

布団ごと、思いっきり上半身を起こす。勢いって大事。

「起きた!」
「この瞬間が毎回笑うwww」

私の起床の仕方がすごく変わってるから、卯月さんは毎回ツボって爆笑してる。ひとしきり笑ったら、涙目のまま頭を撫でてくれた。

「すげえな頑張ったな。えらいえらい」
「頑張って起きたら卯月さんが近くにいて褒めてくれる最高の朝」
「もう昼近いけどな」
「朝早く起きれなくて本当にごめんです」
「朝くらいゆっくり寝てろ。奈々はいつも頑張ってんだから」
「それはバイトの話? 夜の営みの話??」
「両方」

今日も平和だね。


***


夜の営みの話(意味深)



▼好きって言われたら好きって言うだけ

「ねえ天使さん。俺いいこと思い付いた」
「………」

速水くんが突拍子もなくこんな事を言い出す時は、大体面倒くさいことだったりする。

「ねえ、俺まだ何も言ってないのに『めんどくさい』って顔するのやめよう? そういうのはね、口で言わなくても相手に伝わっちゃうんだよ?」
「めんどくさい」
「しかも口に出しちゃった。鬼畜だよ」

速水くんがしかめっ面で愚痴り始めた。愛が足りないだの言葉が足りないだの、次々に不満をぶつけられてため息を溢す。一旦こうなるとなかなか止まらないのが彼だ。結局私が折れるしかない。

「……それで、いいことって何ですか?」
「うん。たとえばさ、俺が『好き』って言ったら天使さんも『好き』って言おう」
「……はい?」

何の話かと首を傾げる私に、速水くんはにっこり笑う。

「だから、どっちかが好きって言ったら相手も好きって返すの。どう?」
「……どう、と言われても」

どう答えれば。

「……なんでですか?」
「だって、俺ばっかり「好き」って言ってる気がするんだよね。俺ばっかり言うのはズルいよ。俺も天使さんからたくさん言われたい」

というのが速水くんの言い分だ。
確かにそれは否定できなくて、速水くんはよく想いを言葉にして伝えてくれている。逆に私は恥ずかしさのあまり言葉にして言えなくて、彼にばかり言わせてることに後ろめたさは確かにあった。でも、それとこれとは話が違う。

「……そういうのって、言いたいときに言うものだと思う。相手に強制するのは違うんじゃないかな」

速水くんのように、相手にたくさん好きって伝えて愛情表現を示す人だってたくさんいる。でも誰もがそういう人ばかりじゃないし、私もそういうタイプじゃない。それに、私が速水くんの提案に乗れない理由は恥ずかしいから、だけじゃない。

「……これは、私の考えすぎなのかもしれないけど」
「うん」
「『好き』って、たくさん言えば言うほど軽くなる気がして安易に言いたくないの」
「……軽くないよ?」
「うん、わかってる。速水くんの想いはちゃんと伝わってるよ」

でも、速水くんが常日頃から伝えてくれる「好き」は、純粋に綺麗な想いが溢れている感情だ。だから、速水くんから好きって言われるのは本当に嬉しい。でも私の「好き」は違う。速水くんが思ってるよりもずっと重くて、汚い感情も隠し持っている。社内でも人気者で、誰からも好かれている彼を独り占めしたい、そんな嫉妬絡みの「好き」だから。好きという言葉が、彼を縛りつける呪いのようにも感じていた部分もあった。もちろん一番の理由は恥ずかしいから、だけど。
ぽつりぽつりと本音を溢せば、速水くんはキョトンと目を丸くする。

「……なんだ、そんなことか」

なんて軽く言いながら、私のほっぺに両手を添えた。むぎゅむぎゅと手のひらで押し潰されて、私は思いきり顔をしかめる。

「んっ、やだ、なにっ」
「あーかわいい。天使さんはほんと俺を喜ばせるのが得意なんだから」
「得意じゃないです」
「でも俺だって軽くないよ。やっぱり不安があるから、安心したくて言ってるのもあるし、相手から言われたいって欲が出てくるんだし。天使さんだけじゃなくて、みんなきっとそうだよ」
「……うん」

そう言われて、自分の発言を反省した。「好き」は言えば言うほど軽くなりそうなんて、速水くんの言葉まで軽いみたいな主張をしてしまった。そんなはずないのに。

「ごめんなさい……」
「なんで謝るの? そこまで深く考えてくれてたなんて思ってなかったから、俺はすごく嬉しかったよ。ありがとう。その本音を聞けただけで満足した」

速水くんの手に引き寄せられて、身体がすっぽりと包み込まれる。トク、トクと心音が服越しに聞こえてきて、胸に広がる安心感に息をつく。速水くんはいつもこうして、言葉や行動で想いを真っ直ぐ伝えてくれている。じゃあ、私は?

「天使さん、好きだよ。大好き」
「……うん。私も大好き」

じんわりと満たされる喜びに導かれるように、溢れる想いが自然と言葉にして出た。互いの額をコツンと合わせて笑い合う。彼の柔らかな笑みに私の心はまた深く満たされて、速水くんが喜んでくれるなら、『好き』という言葉を口に出す努力をしてみようと思えた。まだ、恥ずかしさの方が勝るけど。

「速水くんも、私が好きって言ったら返してね」
「それは俺の得意分野だから」
「うん」
「毎日言ってくれてもいいよ?」
「それは嫌」
「えっ」


***


速水氏は暇さえあれば好きって言うタイプ


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