「「「じゃ〜んけん、ぽん!」」」
「勝った!」
「あ、勝った」
「…………負けた」

はい、それじゃあ半田が3人分のジュース奢りね〜。
松野の気怠そうな掛け声に、半田はがっくり肩を落として「最悪だあああ」とソファーの上で項垂れた。すっかり落ち込みモードに入っている半田に尚も追い撃ちをかけるべく、松野は「さ、はやく買って来てよね。僕たち喉からからなんだから」と言い放ち、勝者の微笑みと言わんばかりの表情を向けた。かわいそうな半田に。

「マックス……お前さ、どこまでサディスティックを極めたら気が済むんだよ…」
「何をいまさら。てゆうか僕がエスなんじゃなくて半田がエムなだけでしょ。よっ、アブノーマル男子!」
「ちげえええ!やめろよそのキショいあだ名!」

漫才コンビ顔負けのコントである。いや…コントじゃないけど。わたしが観客気分で2人の掛け合いを眺めていると、いつの間にやら半田が助けてくれといった眼でわたしを見つめているではないか。もちろん断固拒否したい。自然を装ってテーブルの上のティッシュボックスへと静かに視線を逃がしてみたものの、知らんぷりを決め込もうとしたわたしを意図も簡単に見破った半田はわたしの名前を呼ぶのといっしょに右手首を掴んできた。ぎゃあ!

「なっ、何すんの!」
「俺の痛いけな眼差しを見てないフリでごまかそうとするなんて卑怯だぞ!」
「し、してないってば…!離してよ!」
「いーやーだー。…なあ、お前もコンビニいっしょに行こうぜ。こんな鬼畜松野と密室で2人きりなんて何されるかわかんないしさ」
「えええ、たった10分間くらいで何もされないよ」
「馬鹿!マックスだぞ。そうゆう油断が隙を生ん」
「趣味の悪い妄想は頭の中だけでしてくれないかな半田くん」
「、いってえ!」

神の制裁〜。相変わらずの気怠そうな声音で以って、松野の手に掴まれたティッシュボックス(それも半田の部屋の)の角の部分が半田の頭に右斜め45度の角度で直撃した。かなり痛そうである。まるで痛みが具現化したみたいに半田の目にはうっすらと涙の膜が張っている。うわぁ…見てるだけで痛い。

「マックス…!まじでやり過ぎだからなこれ……!」
「それは半田の妄想でしょ」
「何でだよ!つーか反省の色が全く持って伺えねぇんだけど!」

けらけら松野は笑って「ハイハイ、ごめんなさいね」と謝った。確かに反省のはの字も伺えない態度である。けれど、それに対して少し不服そうながらも半田は今回だけだからな…と唇を尖らせた。とにかく仲直り、だ。
何だだかんだで仲良しなんだからおかしいんだよなぁ、この2人。微笑ましい……かは少し謎めいているけれど、至極和やかな光景を内心とても穏やかな気持ちで見守っているとふたつの視線がいつの間にかわたしの方へ向いているのに気付いた。
えっ、何この流れ。

「てかそれよりさ、俺とコンビニ行ってくれるだろ?」
「まさか僕を置いて中途半田なんかとイチャコラしようなんて言わないよね?」

まだその話終わってなかったんだ……。


▼じゃれる

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