
ニッポン ヨーロッパ人の眼で見た
1934年出版
タウトBruno Taut1880-1938はドイツ人建築家。ヒトラー政権樹立1933年を機に日本へ亡命し半年余で書いた印象記が本書。出版2ヶ月後に日本図書館協会推薦図書になります。
タウトは来日翌日に桂離宮を訪れ、皇族の別荘でありながら征服者然としておらず、構成の妙味で魅せていることにいたく感動、激賞しました。伊勢神宮は構造が透徹し「一切が究極の清楚である」p32「建築家はもとより、いやしくも建築に関係ある人々は、是非ともこの建築の聖殿に詣でなければならない」(日本美の再発見p34岩波新書)とこれまた激賞。
一方、豪奢で装飾過多な日光東照宮には呆れてしまい、また世俗化した仏教を見て、著者は天皇と将軍、神道と仏教を対置して考え始めます。
当時ドイツ人は幕府を軍事独裁による警察国家と捉えており(定義上は正しい)、著者は非軍事的な天皇精神が日本の簡素な芸術を育んだと判じ、神道にその淵源を求めます。
著者が意識したのは土着の多神教的な神道であり一神教的国家神道ではなかったのですが、当時の国粋的な空気に好都合な解釈でした。
やがて日本は天皇機関説排撃、国体明徴声明などを経て全体主義化を深め、ドイツと同盟を締結、奇しくもその年に彼は離日しました。
さて、進歩的知識人(右翼が言う所の左翼文化人)というのは自国に批判的で他国を讃えがちなのですが、その日本絶賛には次の指摘があります。
「ナチスによって自分の建築の理念と実践が簒奪された現実に直面したとき」「自己批判していたのだった。その自己批判は、およそ自己批判が真摯なものであればあるほどほとんどつねにそうであるように、肯定する必要のないものを肯定することによって自己にたいする否定の正しさを証し立てようとした。」「日本という国家社会で現に天皇の名において何がなされているかという視点など、かれには一切なかったことは間違いないだろう。」池田浩士/ナチズムの視線で読む『日本文化私観』/坂口安吾論集2p29-30/ゆまに書房2004
ただ天皇を非軍事的と捉えた事自体が軍国批判でもあり、国粋主義に対しては「真底からの日本人といえども、その独自の本質の喪失を危む必要はない。国民性の力というものは、視野が広くなればなるほど、また国民がその国民性の喪失を危惧すること少なければ少ないほど、ますます強くなるものなのである。日本人の国際性は必ずや日本人をかかる国粋的堕落から守るであろう。」p164と答えてもいます。
また、彼は対称形の建物を、中央を表徴するためか威圧的と考えており、非対称な「桂離宮が、今日すべての建築家にとって模範となる理由は、主要な建物と付属家屋および御庭とを含む結構全体の美が、いかなる点においてもありきたりの形式的定型に依拠していないところにある。それだから相称や軸(引用註、対称形や中心軸)が露骨な影響を及ぼしているような個所はひとつもない。このようなものは桂離宮の建築にはまったく不必要なのである。」(「建築とは何か」p218/鹿島出版会1972)とやっぱり称賛しています。
私は本書を、亡命して失職した建築家が職に就くため、日本人の歓心を買うために書いたと穿った見方をしてしまう。本書も
日本文化私観でも最後には自身の売り込みを図っています。
しかしこういう姿勢は見習いたいですね。
タウトは天皇精神なる語句を掲げつつ、それだけを見ていたわけではありませんでした。
「日本の農家とそこに住む農民の風習とも、またやはり天皇と神道という主題から出たもの(略)神道は根元的なものとして農民の血の中に流れている」p80、それが「農民こそ日本」「日本精神は彼等のうちに」(忘れられた日本p49中公文庫)と変じ、そして「結局日本の米作というものはもう時代遅れなのではあるまいか。私達はいたるところで、農民がこの上もなく辛苦し、また勤勉に働いてる様を見てきた。(略)こうまでしても、日本はなお米を輸入しなければならない状態なのだ。この国の全人口の八割を占める勤勉な農民達は、これほど辛い労働をしながら、自分達の国を養いきることができない。」日本美の再発見p100
これは卓見で、大正時代に食糧需給が逼迫しながら人口抑制しなかった日本は余剰人口を海外移民で処理する一方、領土拡張を要しました。
戦後、植民地を失い食糧難を惹起、しかし品種改良と農作業の機械化が進んで収穫量と省力化が向上、1970年には減反を命じるほどになり、農業がやっと近代化します。
因みに坂口安吾は農村が嫌いで、ここでもタウトと対立しています。
著者は桂離宮の設計者を小堀遠州としていますが、現在では施主の八条宮智仁、智忠親子が建設に立ち会い、遠州は殆ど無関係と考えられています。

三種あるノック式Signoのうち、最初(
1998年 1997年)に発売された製品。日本製?
クリップリリース機構つき。ポケットに挿すといったん引っかかって停まるものの確実に芯収納し、クリップを押さえたままでもノック可能。
替芯φ6.1×111.5mm, JISゲルK型、型番/ボール径/筆記距離;
UMR-83/0.38mm/400m
UMR-85N/0.5/800
UMR-87/0.7/570
UMR-80/1.0/330。
パイロットとサクラクレパス以外の日本のノック式ゲルと概ね互換。

耐候テストが不十分に思えるほどの不変性を示し、公文書にも使えます。
顔料インクで4色。0.5黒インクは色が薄く、赤は明度がちょっと低い。1.0のみインク速乾性に欠け、裏ぬけしやすく、横置き保管をオススメ。1.0なら
サラサが扱い易いですね。
書き味は良好ですが、筆記角度が浅いとざらつき気味になります。
シグノノック式はすべて替芯共通ですがクリップリリース機構つきは本品のみ。
ペンの定位置が机上のペン立てではなく、服のポケットである場合はこれを試してみたらどうでしょうか。
ただし軸は太めなので作業着の上腕部ペン差しに入らなかったりするかもしれません。