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そして自分が生まれた台座に腰かけると、今だ壁際で硬直する“モノ”達を一瞥し、薄く微笑して言った。
「待たせたな。――さあ、楽しい遊び(ゲーム)のはじまりだ」
ライカン・ロードの言葉に答えるように、あちこちから歓声があがった。
緊張から解放された“モノ”たちは、それに呼応して本来持つ狂気を覗かせはじめる。
それは次第に大きさを増していき、ついには雄叫びのように荒々しいものになっていった。
「ライカン・ロード様っ!!」
「吸血鬼(ヴァンパイア)共を殺せ!」
「世界を我らが手に!」
熱気は広間全体に地鳴りのような振動となって響き渡る。
――瞬間、天にかかる満月が雲のヴェールから再び姿を現し始め、広間を照らし出した。
月光に浮かび上がったのは、もはや完全に人の形を失い鈍色(にびいろ)の体毛に覆われた大勢の巨大な獣。
大きく裂けた真っ赤な口と鋭い牙、犬にしては不自然に長い手足を持つ、人狼(ワーウルフ)たちだった。
「相変わらず、血の気の多い奴らだな」
ライカン・ロードは苦笑すると、さっと身をひるがえして古城の奥へと姿を消した。
人狼たちは、主(あるじ)が去った後もなお彼の復活を知らせるように咆哮をあげ続けたのだった。
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