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青年は自分の力に少なからず自信を持っていた。
幼い頃より血の滲(にじ)むような鍛練と実践を繰り返し、強大な力を手に入れたはずだった。
しかし今、飄々(ひょうひょう)とした表情で見つめてくる男から伝わる、圧倒的な力と威圧に、言いようのない恐怖と、期待に打ち震える感情が内から湧き上がってくるのを止められないでいた。
この男の意に沿わぬ返答をしたら、殺されるかもしれない。
青年は乾いた喉を湿らせて、掠(かす)れた声でゆっくりと言葉を紡いだ。
「いいえ、ライカン・ロード様。私は嬉しいのでございます」
「嬉しい、だと?」
「はい。憎き吸血鬼(ヴァンパイア)共を殲滅できるかと思うと、心がどうしようもなく高鳴るのです。この震えはそのためにございます」
ライカン・ロードと呼ばれた男は青年の鋭い光彩を放つ瞳を試すように見据え、
「……ハハハハハッ!! よくも言ったものだ! そうか、その震えはそのためのものだと言うのだな!」
心底面白そうに噴き出した。
狂ったようにクツクツと笑うライカン・ロードが、ふいに青年の喉笛を掴んでいた手を乱暴に開放すると、青年は床に崩れ落ちて苦しそうに咳き込んだ。
「まあいい」
ライカン・ロードは青年に興味をなくしたように背を向け、再び広間の中央に戻っていった。
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