4-3

「――ライカン・ロード様……?」


 畏怖を含んだ声に、肉片から生まれた男は静かに目を開けた。
 月の光を集めたように透き通った金色の髪と、狂気に輝く白藍色の瞳。
 程よくついた筋肉に均整のとれた肢体。
 やや冷淡な印象を受けるが整った顔立ちをした男は、質問には答えずに自らの顔や体を確認するようにぺたぺたと触っていた。

 すると、

「我らがライカン・ロード様。お会いしとうございました」

 一人の年老いた男が臆することなく歩み寄っていった。
 上質な絹の衣(ローブ)をうやうやしく掛けてやる。
 ライカン・ロードと呼ばれた男は老人を一瞥(いちべつ)すると、

「お前か。俺は別に会いたくなどなかったがな。――また生まれ変わってしまったか」

 淡々とした何の感情も読み取れない声音だ。
 男はふと顔をあげ、自分に注がれている視線に気がついた。
 視線の先には、驚愕に目を見張ったまま声もなく佇(たたず)む“モノ”たち。
 その内の一人、筋肉質な体躯をした青年を見やり、唇を三日月形に歪めて笑った。


「俺が怖いのか? 震えているぞ」

 瞬間。いつの間に移動したのか、気が付けば青年の耳元で囁く声が聞こえた。

「がっ……っ!」

 それを理解するよりも早く、喉を掴まれ壁に打ち付けらる。
 したたかに打った背の痛みが、青年に思考を取り戻させた。

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