4-2
一体どれほどの時間が経っただろうか。
永遠とも思える沈黙の後。
雲のヴェールはゆっくりと消え去り、煌々と輝く月がちょうど真上にかかる。
天井に穿(うが)たれた穴から、台座に月光が降り注いだ、刹那。
「ついに来たぞ! 我々が待ち望んだ、この時が!」
誰かが声高に叫んだのに呼応するように、赤黒い何かの脈動が激しさを増した!
一際大きく跳ねたかと思うと、まるで臓器に似た収縮を繰り返して次第に膨張をはじめたのだ。
一同がごくり、と唾を飲んで見守る中、それは起きた。
どくんっ!
広間中に響き渡るほどの一際大きな音がするや、頭ほどに膨らんだ赤黒い何かが裂けた。
ごぷっ、と鮮血が噴き出し、台座を伝い落ちていく。
「おおおっっ!!」
大勢の“モノ”たちは驚愕して後ずさった。
誰もが恐怖と戸惑いを隠せず、ただ見つめることしかできないでいる。
赤黒い何かは尚もうごめき続けていた。
裂けた部分からは次々と肉の塊が噴出し、おぞましく形を変えながら徐々に大きくなっていった。
血塗れの肉片は次第に何かを形作り、それはやがて完璧な人の姿になった。
[ 31/34 ]
[†BACK] [NEXT†]
[しおりを挟む]
[表紙へ]