3-10






 会議が終わり、自室に戻ったのは空も白み始める頃だった。

 凛は自室に着くなり、大きなベッドに身を投げ出した。

「疲れた」

 ため息と共に心から呟くと、枕に顔を埋める。
 手足をばたつかせ大声で叫びだしたい気分だが、もはやそんな気力は残っていなかった。

(お飾りなだけならまだしも、あくびしちゃうなんて。本当に虫ケラ以下だわ……)

 そしてまた深いため息をはく。
 ルジェにまでも、恥をかかせてしまった。

(それなのにちょっと嬉しいなんて、最低ね)

 だってまさか、ルジェがかばってくれるなんて思ってなかったから。
 剣の稽古の時はいつも、文句ばかり言われるし、喧嘩ばかりしているから。

(でも仕方ないじゃない。ルジェったらいつも眠たそうにし――)
 
 そこまで考えて、凛ははっとした。

 吸血鬼は夜行性なのだった。
 彼らは一見普通の人間にしか見えないから、忘れていた。

「そっか……私に合わせてくれてたんだ」

 思わずぽつりと自嘲した。
 ルジェだけじゃない、グレイズも、侍女のティティーさんも、みんな――。

 吸血鬼の女王のはずなのに、凛はなぜか吸血鬼っぽくない。
 別に血を吸いたくもならないし、特有のずばぬけた力もない。
 むしろ自分は人間だと思っているのだが、周囲から言わせれば紛れもない吸血鬼なのだという。

 だとしたら相当な落ちこぼれなのだろう。

 凛は自らの考えを振り払うようにきつく瞼を閉じると、深く意識を沈みこませた。

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