3-9
「両者共、会議を続けさせてくれんか?」
二人の間に割り入ったユーグ・ヴァーグ卿は、穏やかながら威圧的な口調で言った。
「「申し訳ございません」」
二人は急に改まって、深く頭を垂れる。
「ユスティダ、まかりなりにも我らが王ぞ。言葉を慎むがよい」
「は、はい!」
さっきまでの威勢はどこへやら、蛇に睨まれた蛙のように男は恐縮した。
「それからルジェよ。我らは別に言い訳を聞きたいわけではないのだ」
「ですがっ……!」
「ルジェ、いいの!」
尚も口をぱくぱくしているルジェを遮り、凛は叫んだ。
「だけどお前――」
「いいの」
「凛ちゃん」「凛さん」
心配そうに見やるアッシュとグレイズに知らぬふりをして、ぐるりと吸血鬼達を見渡した。
今彼らを見たら、きっとすがってしまうから――。
「皆さん、ご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。どうぞ会議を続けてください」
深くお辞儀をしながら、己の不甲斐なさに強く拳を握りしめることしか、凛には出来なかった。
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