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薔薇の女王U
-La lune de vampires-
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prologue
――薄明かりの下に、女がいた。
そこは豪奢な文様が天井や壁一面に描かれた部屋だった。
高い天井の中央から荘厳に垂れ下がるのは、蝋燭(ろうそく)の炎を集めて淡い光彩を放つ、大きなシャンデリア。
そこかしこに散りばめられた宝石が、まるで獲物を吸い寄せる罠のように、妖しく輝いている。
そのちょうど真下で、緩(ゆる)く巻いた髪を弄びながら、不満げに寝台に腰掛けているのは、女――“エリーゼ”だった。
辺りに立ち込める甘い香(こう)には、思考を麻痺させる効果でもあるのだろうか。彼女の部屋に足を踏み入れてから、どうにも頭が重い。
エリーゼは豊かな膨らみを強調する胸元のはだけたドレスに、女性らしい身体の曲線を惜しげもなく晒す、すべらかな絹の生地を纏っている。
薄桃色の愛らしい唇に長い睫毛は、どこか憂いを帯びて弱弱しく伏せられていた。
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