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 会議は滞りなく進んでいた。

 街の情勢や人狼(ワーウルフ)の出没情報など、各々に報告をあげていく。


「――それではモントールの街ですが、これまで通り境界に軍を配備し警戒を続けます。よろしいでしょうか、女王様?」

 男は報告書を読み終わると、凛に視線を寄こした。

「はい? えっと……」

 何か答えなければと、必死に考えを巡らせる凛を、アッシュが遮った。

「近頃、モントールでは人狼の襲撃が多発していると聞いています。これまで以上に警備を増やした方がいいのでは? また、卿の反乱の件で混乱が続くエマリエルドール街の影響で、今後十分に血液が行き渡らなくなる可能性があります」

「おお! 確かにそのようですな。警備を増やす手配をいたしましょう」

「そういえばモントールでは、エマリエルドールの人間の血液を、大量に輸入しておりましたわね」

「エマリエル卿の反乱のせいで、街は焼け人間のほとんどが死んだ。モントールだけでなく、世界中の同胞(ヴァンパイア)に少なからず影響するだろう」

「ならロクナグ国の王に交渉するしかあるまい。奴らも我らを敵に回したくはないだろうからな」
「よし、即急に手配の準備だ」

 アッシュの言葉によって、会議は淡々とかつ迅速に進んでいく中、凛は自分の無力さを痛感していた。

(また、何も答えられなかった)

 これで何度目だろう。指示を仰がれても、凛は街の名前すら知らないのだ。
 的確な答えなど、出せるはずがなかった。
 その度に、アッシュ達がフォローしてくれている。
 ルジェに至っては、黙って座っていろとでも言わんばかりの視線を投げつけてくる。

(私って本当、お飾りだわ)

 女王と名前の書かれた人形にでもなったみたいだ。

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