3-6
そこは大きな広間だった。
長方形に並べられたテーブルに、男女年齢も様々な者達が居並んでいる。
十数人はいるだろうか。
皆一様に整った顔立ちと、どこか威圧的な雰囲気を合わせ持ち、ピリピリとした空気がこの部屋を支配していた。
(この人達が偉い吸血鬼!?)
日本でいう政治家みたいなものだろうか。なんだか怖い。でも――。
「あの、遅れてすみませんっ!」
凛は威勢良くお辞儀をした。
顔をあげると、吸血鬼達は一様に、珍妙な光景でも見たかのように、目を見開いていた。
気のせいか、後ろでルジェのため息が聞こえたような気がする。
「? えっと……」
(私、何かまずかった!?)
すると、
「これはこれはようこそ、お待ちしておりました。麗しき我らが“我が君(ロゼット)”」
中でも一際風格のある老人、ユーグ・ヴァーグ卿が、立ち上がって凛に優しく微笑み、恭しく頭を垂れた。
それを合図にするように、吸血鬼達は次々と立ち上がり深く頭を下げる。
自分より目上の大人に、敬語を使われるのは今だに慣れないし、どうしていいかわからない。
「あ、あの……」
「お優しい我らがロゼット。どうかお気になさらず。ささ、会議をはじめるとしましょう」
「は、はい……」
狼狽する凛に、ユーグ・ヴァーグ卿は優しく促(うなが)した。
(もう! こんなんじゃ全然だめだわ。もっとしっかりしなきゃ!)
凛は密かに意気込んだ。
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