3-4

 闇の底に繋がっているような、薄暗い通路を抜けて、凛達はやがて大きな扉の前に到着した。
 燭台の灯りに照らされて、灰色の石煉瓦造りの壁に、木製の大きな扉がよく映える。


 この向こうに――。

 凛はごくり、と唾を飲む。


「よっ! 凛ちゃん、久しぶり」

「……アッシュ!」

 振り向けば、奥の通路を歩いて来る者がいた。
 空気を全く読まない陽気な声の主は、ロゼリオンの一人、アッシュである。
 アッシュは透けるような銀色の髪と、さわやかな笑顔の美青年で、凛に柔らかく笑いかけた。

「城での生活には慣れたかい? しばらく留守にしちゃてごめん」

「そんなことより! 今までどこに――」

「アッシュ! 例の町の様子はどうでしたか?」

 問い詰める凛の言葉を遮って、グレイズはアッシュに詰め寄った。
 ルジェとアッシュもとたんに険しく眉根を寄せる。

「ああ。今のところ問題はないみたいだ。近頃、人狼(ワーウルフ)達の動きが活発になっているからな。油断はできないが」

「そうですか。それでは――」

「ねえアッシュ! どういうことなの? 何かあったの?」

 アッシュは少し困った表情を浮かべる。

「うーん、別にどうというほどのことでもないよ。ただちょっと、人狼の被害にあっている町を、偵察に行ってきただけさ。凛ちゃんは気にしなくていいから」

 深く詮索するな。

 口調は柔らかいけれど、なんとなくそう言われているような気がした。

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