3-3
「おい馬鹿女。迎えに来てやったぞ」
「凛さん、そろそろ時間ですよ。行きましょうか」
ちょうど支度が終わった頃、ルジェとグレイズが訪ねて来た。
「は、はいっ!」
凛は顔の筋肉を強張らせて、長椅子から勢いよく立ち上がった。
グレイズはくすり、と笑って言う。
「そんなに緊張しなくてもいいんですよ?」
「だっ、だって……!」
今になって不安になってきた。そんな偉い吸血鬼達の前で、女王らしく振舞えるんだろうか――?
「何も考えていなさそうなのに、一丁前に緊張するんだな」
ルジェは珍しいものでも見たように感心してみせた。
「ル、ルジェ!! あんたいっつも嫌味ばっかり言って! 私は今まで普通の女子高校生だったんだからね! 緊張するに決まってるでしょ!」
つい最近まで、凛は日本で暮らす普通の女の子だった。
なのにいきなりこの世界に連れて来られ、女王だなんだと言われても困るというものだ。
ルジェはため息をついてから、
「前にもいっただろう。お前は何もしなくていいって。そのために俺たちロゼリオンがいるんだからな」
そっぽを向いて答えた。その横顔がほんの少し赤くて、照れているようにも見える。
「う、うん……」
凛は一瞬目を見開いて言った。
(ん? 今のは一応励ましてくれた……のかな?)
「そっ、そんなことより、早く行くぞ。馬鹿女っ!」
こほんっ、とわざとらしい咳払いをして誤魔化そうとするするルジェに、凛は思わずぷっとふきだした。
素直じゃない奴――。
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