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「おい馬鹿女! 一体何をぶつぶつ言っている!? 聞いているのか?」

「ふおぇっ?」

 ルジェはテーブルをバンっと叩くと、凛ははっとして素っ頓狂な声をあげた。

「今の話、聞いていたのかと言ってるんだ!」

「? 何が……?」

「なっ――」

 凛が不思議そうに首を傾げると、ルジェは呆れてものも言えない、という様子でため息をついた。
 その横でグレイズはクスクスと面白そうに笑っている。

「ご、ごめんなさい……」

 全然聞いていなかった。恥ずかしさと申し訳なさから、凛は赤面した。

「今度ベルゼイナである、凛さんのお披露目会のことですよ」

「私の、お披露目会――?」

「そう。新しい女王が立ったとメルヴェーユ中の吸血鬼に知らせるために、各地方の貴族(イェゼン)や領主(エリュシオン)、またはその一族や代表が集まって宴が開かれるんです」

「その宴の主役がお前だ、馬鹿女」

「わたし?」

「まかりなりにもお前は僕の主(あるじ)なんだから、くれぐれも恥ずかしい行動はするなよ?」

「あのねっ! そんなこと急に言われてもどうすればいいのかわか――」

「何もしなくていいさ。下手に何かしたら、お前が何の力もない無能な女王だとわかってしまうからな」

 ルジェはナプキンで口を拭いながら何でもない風に言った。

「あ、そう。どうせ私はアストレーヌ女王には似ても似つかない無能な女王よっ!」

「お前にしては珍しく良く分かってるじゃないか」

「むっ……! ふんっだ!」

 言い返すことができなくて、凛は精一杯の怒りを込めてそっぽを向いた。

「さあ、休憩は終わりだ。お望みどおり、しごいてやるから覚悟しろよ!」

 ルジェはニヤリと意地悪く笑った。

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