2-3
◆◇◆
「さあ凛様、たんとお召しあがりくださいませ」
侍女のティティーは、木陰のテーブルに持ってきた昼食をてきぱきと並べはじめた。
そうしてあっという間に豪華な食事が用意され、凛たちは一時休息をとることにした。
――一通り腹を満たした後、グレイズが穏やかに口を開いた。
「そういえばナイトはどこへ行ったのでしょうね?」
「さあな。人探しとか何とか言ってたが、こんな馬鹿女を僕たちに任せて勝手なもんさ」
凛はムッとしたが無視することにした。
いちいちルジェの悪口につっかかっても、疲れるだけである。
「凛さんは何か知りませんか?」
「へ? さ、さあ……全然」
ぎくり。裏返りそうになる声を堪え、そう答えてから、凛はナイトに言われたことを思い出していた。
エマリエル卿という吸血鬼が起こした事件が片付いたすぐ後のことだ。
凛とナイトは、死んだとされる先代女王が、実はまだ生きているかもしれないことを知った。
もし本当なら重大事件のはずだが、ナイトはこの事は誰にも話すな、と言ったのだった。
理由は教えてくれなかった。
けれどきっとナイトは、先代女王もしくはその手がかりを探すべく動いているのだろう。
凛はこの世界のことを何も知らない。吸血鬼の女王だと言われたって、特別な能力があるわけでもない。
自分の身さえも、守れるほどの力もない。
凛には、何も出来ることはない。だけど……、だけど。
「少しくらい相談してくれたって、いいじゃない――」
無意識に呟いていた。
[ 11/34 ]
[†BACK] [NEXT†]
[しおりを挟む]
[表紙へ]