2-2

「ルーク!」「グレイズさん!」

 木陰の長椅子に腰掛けて古書を読んでいたグレイズ・ルークスフィードは、こちらを見やるとクスクスと微笑した。
 ウェーブのかかった紫色の髪に、紫苑色の穏やかな瞳。すらりとした長身で、驚くほど美形の青年である。

「ルジェ、大人げないですよ? 凛さんは異世界で育ったのですから、いきなり剣術なんて出来るようになるはずがありません。それを教えるのがあなたの役目でしょう?」

「うっ、まあそれは……そうだけど。こ、この馬鹿女が――」

 グレイズにたしなめられると、ルジェは急にしどろもどろになった。

「……そうだ! グレイズさんが稽古してくれませんか? ルジェなんかに教えてもらうより、絶対にいいわ!」

 頬を膨らませてムッとしていた凛は、急にぱあっと満面の笑みを浮かべて言った。
 グレイズは少し驚いた後、申し訳なさそうに眉根を寄せる。

「すみません、凛さん。私はどうも手加減するのが苦手でして……。それに、ルジェは大分わがままで短気で生意気なところもありますが、こう見えてロゼリオンの中で一番面倒見がいいんですよ」

「……オイ、ルーク。それは褒めているのか……?」

 額に手を当て、ルジェは大きなため息をついた。

「そう、ですか。じゃあアッシュかナイト――」

 言いかけて、ナイトに稽古なんて頼んだら、ルジェ以上の罵詈雑言が飛んできそうだと思い至った。
 それに今、二人は城(ここ)にいないのだった。
 凛はがっくりと頭を垂れる。

「それより凛さん、お昼の支度が出来たようですよ」

 グレイズは城の方を見やり、持っていた本をぱたりと閉じて微笑した。
 ちょうど侍女のティティーが、昼食を持ってやってくる所だった。

[ 10/34 ]

[†BACK] [NEXT†]
[しおりを挟む]
[表紙へ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -